4月27日/産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長 依田 巽氏)

東京にコンテンツ国際取引市場の創設を

−東京国際映画祭にアジアの事業者が参加しやすいマーケットを創出


Introduction
日本経団連では、本年3月の提言「『知的財産推進計画』の改訂に向けて」において、東京国際映画祭や東京ゲームショウなど国際的なコンテンツ振興イベントの支援と、それに付随したコンテンツマーケットの創設支援を求めている。政府ではこうした動きを受けて、10月に開催する東京国際映画祭において、コンテンツ国際取引市場の創設を支援する取り組みを進めている。エンターテインメント・コンテンツ産業部会では経済産業省の広実郁郎文化情報関連産業課長、東京国際映画祭事務局の境真良事務局長を招き、市場創出に向けた取り組み状況について説明をきき、意見交換した。

I.広実文化情報関連産業課長説明要旨

1.コンテンツ産業の国際展開に向けて

戦後わが国政府は、製造業の国際展開推進のためにJETRO(日本貿易振興会、現在の日本貿易振興機構)を設立して世界中にオフィスを設け、また巡航見本市船さくら丸を建造するといった施策を展開してきた。それと同じ施策を展開することはもはや時代に合わないが、新たな形でリソースを分配したい。
わが国には「作品」として素晴らしいコンテンツがあり、ゲームやアニメは諸外国で大変な人気を博しているが、十分なリターンが得られていない。わが国コンテンツの優位性を活かし、コンテンツを「商品」として国際的に展開していただきたい。
国際展開に向けた課題として、(1)コンテンツ市場が海外中心であり、わが国企業は常に海外市場で不利な戦いを強いられてきたこと、(2)製造業など他産業との協力による戦略的な国際展開がなされていないこと、(3)効率的・効果的な宣伝・広報がなされておらずマーケットへの訴求力が弱いことが挙げられる。
そこで (1)国内における国際取引市場を創設し、世界の12大映画祭の一つである東京国際映画祭にアジア随一の総合的な映像国際市場を設けることを支援するものとし、今年度3.2億円の予算措置を講じた、(2)カンヌはじめ世界の国際市場への出展支援(商業ブースの充実、ナショナル・パビリオンの設置等)をすることとした(JETRO補助金の6.9億円の内数で措置)、(3)海賊版対策の抜本的強化を図り、現地で情報を収集し、個別企業の訴訟支援まで行う組織を整備することとした(3.0億円の予算措置)。

2.マーケット戦略の方向性

東京国際映画祭は、従来、映画普及のための映画上映イベントに過ぎなかった。これからは、映像産業と映像ファンの交流と高度化を目指すイベントとするべきである。
マーケット戦略の基本的方向としては、(1)アジアの事業者が参加しやすい市場、(2)アニメ等日本の強みを活かした市場、(3)一般消費者向けイベントと連携した市場、(4)映像を中心としつつ他分野にも裨益する市場である。
2004年度は映画、アニメ、テレビ番組その他の映像コンテンツの上映、放送、パッケージ化、商品化権を重点に置いた市場とし、その後に2005年度以降、テレビゲーム、出版、音楽等その他のコンテンツについてもB to C(事業者→一般利用者)イベントと連携した専門市場を順次増設していくことになろう。相互連携でシナジー効果のある「コンテンツマーケット群」の創出を期待している。最終的にはエンターテインメント・コンテンツ全体を見渡してアジア最大の国際取引市場に育てたい。
政府では日中韓の政府・民間会合もこの時期に開催する予定であり、さまざまな取り組みを連携させていきたい。

II.境東京国際映画祭事務局長説明要旨

第17回東京国際映画祭は10月23日から31日まで開催される。従来のB to Cの場に加えて、B to B(事業者間取引)の場を創出するべく、具体的には2つのマーケットを構想している。
一つは日本のアニメ、ゲーム等コンテンツ関連の大規模事業者が協力し、世界のコンテンツ関連事業者に対して存在感を発信する市場であり、大規模一般向けイベントと融合・一体化を図ることにより、一般参加者の熱気による取引促進効果を狙う。
もう一つは多様な国から多様なサイズの事業者が参加する、ビジネスのみの市場であり、アジアの実写・アニメ映像関連企業など、小規模事業者の参加促進とビジネスサポートを充実させる。
総合リエゾンブースでの取次サービス等により両市場の連携を図る。

III.意見交換要旨

日本経団連側:
韓国のように積極的に日本のコンテンツ産業を誘致している国がある一方で、中国のように規制の強い国もある。国家間での調整はどうなされているのか。

広実課長:
日本ではこれまであまりコンテンツの国際展開に関する障壁について主張をしてこなかった。文化的規制はWTOの対象外とするというのがフランス、中国、韓国等の主張であり、この障壁をどう引き下げるのかに各国は腐心している。現在、準備されているFTA(自由貿易協定)の締結交渉などが文化的規制撤廃のよい機会であり、経済界の意見を反映させるように、取り組めばよい。

日本経団連側:
  1. 権利を守る姿勢だけでなく自らが輸出していく姿勢も必要である。
  2. アジアにおいてテレビの大規模なマーケットで成功した事例はなく、日本で成功させれば近隣諸国にアピールできる。
  3. 映画とテレビとではバイヤーが異なる上、他の国際見本市のスケジュールとの兼ね合いもあり、海外からどの程度のテレビのバイヤーが集まるか不明である。そこで国内のケーブルテレビや衛星放送の事業者も招致するなどの工夫が必要である。
  4. 映画業界とテレビ業界の双方が関係した映画祭を成功させれば画期的である。
  5. 以前は日本の映像コンテンツに商品力がなかったが、今は最高のタイミングである。
  6. フィルム・マーケットで成功する条件は明確なコンセプトのもと、差別化された商品を提供することである。
  7. 日本の強みであるアニメ映像の商品力を中心にアピールすることがよいのではないか。
  8. ゲーム産業のような映像関連産業では何ができるのか、9月に開催される東京ゲームショウとの兼ね合いなどビジネスモデルを再検討することが必要である。
《担当:産業本部》

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