4月20日/信託業法案に関する説明会

信託業の受託可能財産を拡大し、担い手を金融機関以外に開放

−金融庁 川嶋信託法令準備室長より、信託業法案についてきく


Introduction
経済界における信託の活用ニーズが高まっている。たとえば、多様な財産権の流動化による資金調達、また、自社グループ内の知的財産の一元管理や事業会社独自のノウハウを活かした信託の受託などが考えられている。日本経団連では、このようなニーズに対応するため、規制改革の一環として、政府に対して信託業法の見直しを働きかけてきた。このような動きをも受けて、政府では本年3月5日、信託業法の全部改正を行う信託業法案を国会に提出した。そこで、日本経団連では、国会提出中の同法案に関する説明会を開催し、金融庁総務企画局信用課の川嶋真 信託法令準備室長から同法案に関する説明をきくとともに活発な意見交換を行った。日本経団連としては、同法案が早期に成立することを期待している。

川嶋室長説明要旨

1.信託業法案の内容の説明

(1) 受託可能財産の拡大

現行の信託業法において金銭などに限定されている受託可能財産の範囲を、財産権一般に拡大する。

(2) 信託業の担い手の拡大に関する制度整備

現在、信託業は信託兼営金融機関のみが行っているが、金融機関以外の参入を可能とする。

(1) 信託業の参入基準
信託会社を、業務の裁量性の程度に応じ、一般の信託会社と、指図に基づく運用や財産の管理行為のみを行う管理型信託会社とに分類する。前者を免許制、後者を登録制(3年ごとの更新)とする。最低資本金については、前者は1億円を下回らない額として政令で定める金額、後者は政令で定める金額とする。人的構成については、業務を的確に遂行することができる知識および経験を有することなどを必要とする。
外国で信託業を営む者(外国信託業者)についても、免許・登録により、国内の支店で信託業務を営める制度を整備する。
(2) グループ企業内信託の特例
委託者・受益者・受託者の三者が同一の企業グループ(親子関係にある会社集団で、外国会社も含む)に属する場合には、届出により、受託者が信託を引き受けることを可能とする。ただし、信託の利益が同一企業グループ以外に及ぶ場合(受益者である特定目的会社の発行する資産対応証券を、同一の企業グループに属さない者が取得している場合や、信託の受益権に対する投資事業を行う匿名組合契約を同一の企業グループに属さない者との間で締結する場合など)には、この特例を認めない。
(3) 担い手の組織形態
担い手の組織形態は株式会社が基本であるが、文部科学大臣および経済産業大臣の承認を受けたTLO(技術移転機関)については、株式会社以外の組織形態による信託の引受を認める。
(4) 行為規制など
信託会社には、受益者保護などの観点から、以下の行為規制などを課す。
信託会社は、営業保証金(政令で定める金額)を供託しなければならない(内閣総理大臣の命令に応じて供託する旨の保証契約を締結することも可能)。
信託会社に、委託者に対する説明義務を課し、不当勧誘を禁止する。なお、説明義務に関しては、内閣府令で定める場合には免除される。
信託業務については、一部を外部委託することを可能とする。ただし、全部を外部委託することは認められない。委託先は、委託された財産の分別管理を行えること、また、委託先が委託された信託業務を的確に遂行できる者であることなどの要件を満たさなければならない。
信託会社には兼業制限を課しており、信託業務を適正かつ確実に営むことに支障を及ぼす恐れがない業務であって、信託業務に関連する業務でなければ営むことができない。
元本填補契約付信託については、預金類似の商品であり預金取扱金融機関並みの規制が必要となるため、信託兼営金融機関以外には認めない。
信託会社は、忠実義務、善管注意義務といった受託者責任を負う。また、信託会社に対し、分別管理義務を遂行する体制整備を義務付ける。
その他、監督体制として、内閣総理大臣に報告徴求権、立入検査権を認め、法令違反の場合などに業務改善命令、免許又は登録の取消しなどを可能とする。
信託会社によるディスクロジャーに関しては、業務・財産の状況に関する説明書類の縦覧を義務付ける。
(3) 信託サービスの利用者の窓口の拡大
(1) 信託契約代理店制度の創設
信託サービスの提供チャネルを拡大する観点から、信託契約の締結の代理または媒介を業とする信託契約代理店(代理店)制度を創設する。信託契約代理業は登録制とする(個人・法人とも登録可能)。登録要件は、業務を的確に遂行する体制の整備などである。代理店は、資本金および営業保証金などの財産的基礎を有する必要はない。代理店が顧客に加えた損害の賠償責任は、その所属信託会社が負う。
(2) 信託受益権販売業者制度の創設
代理店制度と同様、信託サービスの普及を促すために、信託受益権販売業者制度を創設する。販売業は登録制とする(個人・法人とも登録可能)。代理店が所属信託会社のために信託代理業を遂行するのと異なり、信託受益権販売業者は独立した業者である。そのため、登録は3年ごとの更新制とし、業者には営業保証金の供託義務を課す。
(4) その他

施行期日は、法案成立後、公布の日から6ヵ月以内の政令で定める日とする。なお、免許・登録の事前申請は、公布の日から3ヵ月以内の政令で定める日から可能とする。

2.法案成立後の制度整備について

法案が成立すれば、政令、内閣府令、事務ガイドラインなどの必要な制度整備について検討する。

《担当:経済本部》

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