4月23日/社会貢献担当者懇談会(座長 長谷川公彦氏)

社会貢献活動においてより良いパートナーを選択するために


Introduction
企業が社会貢献活動を推進していく上で、NPOとの効果的な連携は重要な課題の1つである。また、NPOとの連携にあたっては、説明責任の観点からNPOの透明性と信頼性が高まっていることが望まれる。このような中、「民間NPO支援センター・将来を展望する会」が本年2月、『信頼されるNPOの7つの条件』を取りまとめた。そこで社会貢献担当者懇談会では、取りまとめの中心的役割を果たした日本NPOセンターの山岡義典常務理事より『7つの条件』についてきき、社会貢献活動においてより良いパートナーを選択するための参考とした。

山岡常務理事説明要旨

1.「7つの条件」取りまとめの背景

1998年12月の特定非営利活動促進法の施行から5年以上が経過し、この間に約1万6千のNPO法人が誕生した。NPOが日本社会に着実に受け入れられつつある一方、反社会的な活動を行うNPOも現れるなど問題となっている。今問われているのは「NPOらしいNPO」とは何か、ということではないか。このような問題意識のもと、日本各地のNPO支援センター関係者が昨年9月に札幌に集まり、「信頼されるNPOの7つの条件」をめぐって議論を重ねた。そこでの議論を最終的に日本NPOセンターにおいて取りまとめ、本年2月に公表した。7つの条件は理想のNPOを語ったものではなく、標準的な水準を描いたものである。

2.信頼されるNPOの7つの条件

(1) 明確なミッションを持って、継続的な事業展開をしていること

NPOが目指す活動の目的をわかりやすい言葉で表現し、その活動によってどのような社会的変化をもたらそうとしているかなどを具体的に明文化していることが必要である。また、活動目的に沿った事業を適切に行っていることが望まれる。そのためには、中長期的な事業計画を持ち、それを客観的に評価しつつ、タイムリーな見直しをしていくことも重要である。

(2) 特定の経営資源のみに依存せず、財政面で自立していること

NPOは市民の自発性を大切にして発足しているので、自由度の高い自立した経営が求められる。そのため、特に財政面では会費や寄付金収入、自主事業収入などの安定した財源と、受託事業収入や補助金・助成金収入などの一時的だがまとまった財源とのバランスを考える必要がある。とりわけ「協働」の名のもとで増加している行政などからの委託事業に関しては、設立目的との整合性の検討や提示された条件について交渉していける力量が重要である。

(3) 事業計画・予算の意思決定において自律性を堅持していること

特定の個人や組織の意向にコントロールされることなく、独立して事業計画や予算を決められるかどうかが重要な点である。また、理事会や総会が定期的に開かれているなど、団体としての自律したガバナンスが機能していることも求められる。

(4) 事業報告・会計報告などの情報を積極的に公開していること

広く社会の人々から理解と共感、支持・参加を得るためには、活動や成果に関する事業報告と、収支や資産等に関する会計報告がポイントとなる。NPO法人は年度終了後3ヵ月以内に所轄庁に事業報告書や決算報告書を提出し、一般の閲覧に供することが義務づけられているが、法的義務にとどまらず、より積極的に情報公開することが望まれる。

(5) 組織が市民に開かれており、その支持と参加を集めていること

社会問題の解決に取り組むNPOの運営にあたっては、その意思決定と事業推進において、広く市民が参加しやすいシステムを整備することが望ましい。市民の共感と支持を基盤とした組織づくりは、会費や寄付金などの収入拡大にもつながり、市民参加型の組織化が進められることとなる。

(6) 最低限の事務局体制が整備されていること

社会的な事業を組織として行っているNPOとしては、常勤スタッフの有無にかかわらず、外部からの連絡にいつでもきちんと対応できる体制の整備が必要である。また、組織内部で情報を共有するための仕組みをつくることや、担当する業務の範囲や責任の所在を明確にしておくことも必要である。

(7) 新しい仕組みや社会的な価値を生み出すメッセージを発信していること

NPOの中には日常的な事業の推進に追われるうちに、当初の問題意識を忘れてしまうところも少なくない。NPOである限りは常に社会に目を向け、より良い社会づくりのために何が必要か、自分たちには何ができるのかを思いめぐらし続けたい。そしてそれをタイミングよくメッセージとして社会に発信しつづけることが、NPOの信頼につながると考えている。

3.NPOの信頼性を高める社会基盤整備

「信頼されるNPOの7つの条件」は、NPOが自己評価し、社会がNPOを判断するときの基準の1つである。こうした基準を参考に、市民一人一人が自らの価値観に応じてNPOを選び、会員やボランティアとして関わっていくことが、多様なNPOの活動を可能にする。そのためには、NPO側の情報公開が不可欠である。日本NPOセンターが2000年4月に開設したNPO法人のデータベース「NPO広場」(http://www.npo-hiroba.or.jp/)では、全国のNPO法人の検索ができるようになっている。所轄庁が公開している基礎情報のほか、アンケート調査に回答してくれたNPO法人の事業内容や過去の収支状況など最大39項目についてもアクセス可能である。積極的な情報公開の姿勢があるかどうかは、NPOの判断材料の1つとなるだろう。

《担当:社会本部》

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