5月14日/情報通信委員会通信・放送政策部会報告書

「企業の通信サービスニーズに関する調査報告書」を取りまとめ


情報通信委員会通信・放送政策部会では、昨年末に「企業の通信サービスニーズに関するアンケート」を実施し、情報通信ワーキンググループでアンケート結果の内容を検討・分析してきたが、5月14日開催の同部会において「企業の通信サービスニーズに関する調査報告書」を取りまとめ、公表した。以下は報告書の概要である。

I.アンケートの目的と実施概要

情報通信分野における急速な技術革新により、企業経営におけるITの重要性に対する認識が高まりつつあり、企業ユーザーにおいて通信ネットワークの利活用が進展している。世界最先端のIT国家の実現を目標とするe-Japanのもとで、例えば家庭向けの高速インターネットについては、競争的な市場環境の中で、世界的にも最も高速で安価なサービスを実現している。一方、企業ユーザー向けのサービスの現状については、企業ユーザーの視点に立った調査や評価が十分になされてきたとは言えない。
そこで、情報通信委員会通信・放送政策部会では、企業ユーザーの立場から、通信ニーズと現実のサービスとのギャップを把握し、改善策をさぐるため、昨年末に日本経団連理事会社を対象に通信サービスニーズに関するアンケートを実施し、約150社から回答を得た。
アンケート調査においては、企業が通信ネットワークを活用する上で、(1)達成したい戦略、目標、(2)有線・無線系のデータ通信および音声サービスごとの重要度と満足度、(3)ネットワークサービス以外の課題、(4)ネットワークサービスの問題により効果が得られなかった事例等について、選択式および記述式で回答してもらった。また、通信事業者からは、別途、アンケートについてのコメントを聴取した。

II.報告書の主な論点

1.通信ネットワーク活用とその目標

多くの企業ユーザーは、生産性の向上、従業員の能力向上、グローバルな事業展開、新しいビジネスモデル、製品、サービスの開発・実現において、通信ネットワークを戦略的に活用したいと考えている。このように、通信ネットワークの利活用に対しては強いニーズが存在しており、企業ユーザーの戦略や目標に的確に応えるサービスが提供されれば、ネットワーク利用の新たな市場が拡大すると考えられる。
しかしながら、企業ユーザーにとって、料金と品質が共に満足する水準に達していないため、期待した効果を得られていない、あるいは活用自体を断念する事例等が指摘されている。

2.企業ユーザーが求める通信サービス

通信ネットワークの戦略的な活用において、サービス分野別の重要度を聞いたところ、多くの企業が有線系通信データサービスの活用を最重視している。また、有線系音声サービスも引き続き重要なサービスととらえており、無線系データ通信への期待も高まっている。また、企業ユーザーは通信サービスの要素として、通信料金、運用コスト、セキュリティ対策を重視していることも明らかになった。
また、通信サービス分野ごとの課題は、以下の通りである。

  1. 有線系データ通信サービスでは、企業ユーザーは通信速度に見合った通信料金を求めている。特に、国内外の専用線、アクセス回線の料金は個人向けサービスと比較して高いとの指摘が多い。
  2. 有線系音声サービスでは、IP電話の導入・運用コストの低下を求めている。
  3. 無線系データ通信サービスでは、有線系サービス以上のセキュリティ確保を求めている。併せて、料金の低下、帯域およびエリアの拡充を求めている。
  4. 無線系音声サービスでは、携帯電話料金の一般電話料金程度への引き下げ、不感地域の解消を求めている。

また、企業ユーザーが期待する技術・研究開発としては、有線、無線を問わず、高速伝送技術、セキュリティに関する技術・研究開発、有線系音声サービスではIP電話に関する技術・研究開発へのニーズが高い。

3.通信事業者からのコメント

アンケート結果について、通信事業者からもコメント等を聴取したが、海外と比べても遜色のない通信サービス料金の水準や、企業ユーザー向けのサービスは高い品質が求められるため料金が高くなることについて、企業ユーザー側の理解を求める意見があった。

III.求められる認識のギャップの解消

今回の調査を通じ、企業ユーザーと通信事業者の間には、通信料金など通信サービスの水準をめぐり、大きな認識のギャップがあることが明らかになった。情報通信委員会では、企業ユーザーのIT利活用推進のため、このギャップを具体的に埋めていく取り組みを行い、必要な改善策を関係方面に働きかける予定である。


《担当:産業本部》

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