5月25日/産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長 依田 巽氏)
Introduction
日本経団連ではさる3月に公表した提言「知的財産推進計画の改訂に向けて」において、コンテンツの二次利用の促進、クリエーター、実演家等への正当な利益の分配を行う基盤として、コンテンツに係る権利情報データベースの整備を提言し、政府の支援を要望している。
そこでエンターテインメント・コンテンツ産業部会では、民間として権利情報・コンテンツ情報の公開・共有化に向けた検討を進めている、デジタル時代の著作権ビジネス研究会の菅原瑞夫主査、同研究会権利情報共有ワーキンググループの飯田尚一座長を招き、権利情報管理のあり方について意見交換した。
デジタル時代の著作権協議会著作権ビジネス研究会では、ブロードバンド時代のコンテンツ流通において、現場のニーズとしてどのような権利情報、コンテンツ情報の整備・充実、公開・共有化が必要かという観点から報告を取りまとめた。この報告のアプローチは、理想論から発して情報の標準化を行うというものではなく、現在各団体や企業組織ですでに行われているコンテンツの情報管理方法に最小限の付加で一層の情報の共有化を目指す試みである。
コンテンツ流通ではオリジナルの利用にとどまらず、多様な二次利用、複製などの流通形態がある。コンテンツは1人または1法人が全ての権利を保有する場合もあるが、多くの場合は多数の関係者が共同製作することにより、幅広い分野の権利者が関わってくる。コンテンツを二次利用するためには、これら多様な権利者の許諾を得る必要があり、権利処理にかかる労力は膨大である。また、コンテンツホルダーは一次利用では必要ない二次の権利処理を行ったり、流通事業者へ提供するためのパッケージ化(エンコーディング)を行ったりすることが求められる。
そこで、コンテンツホルダー・権利者間で契約等に必要な情報として共有される「クローズド情報」(作品等の権利者の実名、銀行口座、分配率等)と、コンテンツホルダー・利用者間や利用者・消費者間でコンテンツをより深く知るためのカタログ的な「オープン情報」(作品等の権利者、他の関連作品の紹介等)とをそれぞれ管理した上で、クローズド情報とオープン情報とを橋渡しすることが必要になる(図表参照)。
現在、クローズド情報とオープン情報(以下併せて「メタデータ」という)はコンテンツホルダーや日本音楽著作権協会のような権利団体等が独自に管理している。このため、これらの情報に一足飛びに新しく番号を振りなおすようなメタデータ体系の統一や標準化を図ることは難しい。そこでそれぞれの団体・事業者の管理するメタデータを利用しながら、それらをネットワーク的に紐付けをするIDの共通化が求められる。
次にIDを「権利者」について共通化するか、「コンテンツ(情報)」について共通化するかが問題となるが、前者の利用の方が進んでいる。権利者IDは一部団体を除いて通番管理をしているのが一般的で、整合性の確保が容易である。「権利者ID+団体内ID」の形式で共通化を図れば、IDを一目見て所属団体を判断できること、権利団体内の管理方法を変更しなくてよいことといったメリットがある。ただし、複数の団体に所属し、複数のIDを持つ権利者の場合、コード管理が煩瑣になること、権利者が所属団体を移動した際の管理が必要になるといった課題もある。
関係者のコンセンサスが得られ、権利者IDの付与がなされるようになれば、メタデータ利用のための基盤づくりが必要になる。権利者へのアクセスを容易にすることや、権利者が作品を提供したりコンテンツ製作に参加したりする際に、相手に自分のIDを通知するなどの仕組みが必要である。また、コンテンツホルダーにとっては作品メニューを充実し、正確な内容の情報を提供することが求められる。同時に、権利者は作品メニューにぶら下がる名簿の充実が必要となろう。