5月18日/アメリカ委員会企画部会(部会長 本田敬吉氏)

米国の通商政策/自由貿易協定(FTA)の進展

−米国のFTA戦略


Introduction
アメリカ委員会企画部会では、日米間のビジネス上の障壁を解消し、日米経済連携をさらに強化するために必要な枠組みや主要課題について、検討を進めている。その一環として、国際貿易投資研究所の佐々木高成研究主幹から、「米国のFTA戦略」について、説明をきいた。

佐々木研究主幹説明要旨

1.米国の通商政策とFTA戦略の流れ

米国では1985年のイスラエルとのFTA以前から二国間FTAへの関心は存在した。米国通商代表部は議会への1981年報告書において、米国は二国間の通商協定をカナダとメキシコ、別々に締結することを勧告し、これが後のNAFTA(北米自由貿易協定)へとつながっている。
米国がFTAに傾斜した背景には、当時遅々として進まないウルグアイ・ラウンドについて欧州に対し、進捗がなければ多国間交渉に代わるFTAがあることを示して牽制する効果をねらったと言われている。

2.米国のFTA候補国を選ぶ基準、要素

ブッシュ政権のFTA戦略については、「FTA候補国の選択基準が不明確」、「アジア通商政策に積極性や計画性が欠けている」、「経済規模の小さい国が相手となることが多く、米国産業の権益追求と外交目的のいずれを重視しているのか疑問」などの批判がある。
現在、米国はFTA締結競争への出遅れ、およびFTA不在による競争上の不利益を挽回するため急速にFTAを推進している。
米国FTAの特長は、(1)自国の権益を地域ベースで実現するため、中南米、ASEAN、中東など各地域における経済統合に貢献する相手国を重要視していること、(2)カリブ開発構想(CBI)、アフリカ成長機会法(AGOA)等の地域別援助政策にFTAの追求がうたわれていること、(3)EU等が締結している既存のFTAへの対抗を意識していること等が指摘できる。

3.最近の米国FTAに共通する関心事項

最近の米国のFTA交渉で見られる共通の関心事項としては、(1)金融サービス、テレコミュニケーション、速配サービスにおける市場アクセスの拡大、公正な競争、(2)知的財産権の保護、(3)投資(投資家保護、内国民待遇)、(4)税関手続きや政府調達の透明性・効率性の確保がある。
米国国内産業が不利益を被るセンシティブ品目はできる限り交渉から除外するのが通例(例:米豪FTAにおける砂糖の除外)であるが、全体的に輸出拡大が見込まれる場合には、国内業界の反対にも関わらず譲歩する例もある。

4.ブッシュ政権の対アジア通商政策

東南アジアについては、貿易投資拡大および構造改革を通じた経済成長を促し、ASEAN全体の自由貿易地域化を目指している。また、中国がASEANなどとFTAを推進していることを好意的にとらえ、基本的には輸入市場としての中国の役割増大やアジアの経済統合が米国の負担減少につながると考えている。

《担当:国際経済本部》

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