6月2日/関西会員懇談会

企業のダイナミズムを引き出し新たな未来を切り拓く


Introduction
「企業のダイナミズムを引き出し新たな未来を切り拓く」をテーマに、標記懇談会が大阪市内で開催された。当日は、奥田会長、西室・御手洗・三木・宮原・出井・米倉の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、関西地区会員約200名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

I.関西会員側発言要旨

1.自転車の自主安全基準と活用推進について
島野喜三 シマノ会長

自転車業界はBAA(Bicycle Association ApproVed)という自転車の自主安全基準の認証ステッカーの貼付を本年9月より開始し、消費者の安全・安心に対する関心への高まりに対応していく。
しかしながら日本では、自転車に関する認識・活用推進がいまだ不十分で、「自転車の社会的地位」および「自転車文化」が欧米に比べると劣っていると言わざるを得ず、自転車の活用をさらに進めていく必要がある。
業界としては、消費者の安全・安心を第一に、耐久性・品質を重視した製品の提供に努めていくが、自転車本来の利点を活かした住みやすい街づくりといった地域活性化の推進などの面で、日本経団連の協力をお願いしたい。

2.企業のダイナミズムを生かした地域経済の活性化
大橋太朗 阪急電鉄会長

今年4月、茨木・箕面の両市にまたがる丘陵地の開発プロジェクト「彩都」が街びらきした。「人と自然の調和」を都市形成の基本として、ライフサイエンス分野の研究開発拠点をはじめとした学術研究・文化交流拠点と高度情報化など時代のニーズに対応した住環境をあわせて整備していく。
彩都ライフサイエンスパーク、大阪大学、国立循環器病センター、千里ライフサイエンスセンターをはじめとするエリアが「バイオメディカル・クラスター創成特区」として昨年4月に認定を受けた。本来バイオメディカル・クラスターとして実のあるものにするためにはさらに規制緩和・撤廃が必要であり、一定の改革が実現しても、別の規制が新たな障壁となって現れるケースもある。構造改革特区を活かして所期の目的が達成されるよう特区制度の改革が求められる。

3.コンテンツ産業の育成について
辻本憲三 カプコン社長

世界のコンテンツ産業の成長率は年間6.5%成長で、世界のGDP(国内総生産)実質成長率4.4%を上回っている。しかし日本のコンテンツ産業の市場規模は11兆円とわが国GDPの2%であり、米国でのGDP比5%に及ばない。今やコンテンツ産業は国を挙げた国際競争の時代に入っている。米国は20世紀初頭から基幹産業になることを見越し、産業振興に力を入れ、世界のマーケットの4割強を占める。欧州各国や韓国・中国も追い上げている。
日本では議員立法による「コンテンツ振興基本法案」が今国会で成立し、米国並みのGDP比5%、25兆円産業を目指しているが、中古品流通、違法コピー、人材育成等の問題点に直面している。日本経団連には、コンテンツ産業の育成と諸課題の解決に向け今後ともご協力いただきたい。

4.関西経済の活性化について
水越浩士 神戸製鋼所会長

関西経済は明るさを増しているが、本格的な景気回復に向かうかどうかはこれからが正念場である。
関西経済活性化のためには、医療やIT産業等ベンチャー企業の誘致や育成を図る、および各地域の観光資源の魅力を向上させるといった点において、官民一体の取り組みが必要である。また社会基盤としての交通インフラの整備が不可欠であり、陸・海・空の交通網を連携させることが重要である。
各地域が限られたパイを取り合うのではなく、全体のパイをいかに増やしていくかという前向きな取り組みが求められる。
地球温暖化対策は、国民全体で取り組んでいかねばならないテーマである。産業界はその重要性を認識し、CO2排出削減で地道な取り組みを続けており、これまで計画通りの実績を上げている。そのような中での環境税の導入は断固として容認できない。また、温暖化対策としては原発のウェイトを高めていくことが最も有効であり、長期的視野に立って、日本の原発の必要性を訴え、タブー視を打破していく必要がある。

II.フロア発言要旨

自由討議において、以下のような意見が出された。

1.堀場雅夫 堀場製作所会長

ベンチャー企業の育成が進んでいないが、その阻害要因はベンチャーの本質が理解されていない点にある。ベンチャーは初期段階でリスクマネーが必要になるが、間接金融主体で動いてきた日本では資金が集まらない。個人の資金がベンチャーに集まるような仕組みの構築を検討してほしい。

2.桑野幸徳 三洋電機社長

グローバル化に産業がどう戦いを挑んでいくか、が大きな課題だと認識をしている。日本企業に求められるものは先進性であり、それを保つ源泉は技術力である。法人税率引き下げへの日本経団連の取り組みを評価するとともに、研究開発促進税制の拡充に一層重点的に取り組んでほしい。

III.日本経団連側発言要旨

西室副会長より「社会保障制度改革」、御手洗副会長より「経済法制改革の取り組み」、宮原副会長より「政治への取り組み」、出井副会長より「最近の規制改革への取り組み」について、それぞれ活動報告があった。また意見交換において、高原副議長より「日本の競争力と新産業・新事業創出」、三木副会長より「コンテンツビジネスの振興」について、それぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、懇談会での意見を踏まえ、日本経団連として諸課題に積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:総務本部》

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