6月4日/フレーザ ニュージーランド農業貿易特使との懇談会

付加価値の高い農業を目指せ

−農業構造改革の推進について意見交換


Introduction
日本経団連では、農業の国際競争力の強化に向けた構造改革の推進に向けて、農業界との対話や政府関係方面への働きかけなどを行っている。
6月4日、ニュージーランドのグレアム・フレーザ農業貿易特使の来日を機に、同特使と松崎昭雄農政問題委員会企画部会長が懇談し、農業構造改革に関するニュージーランドの経験と日本における改革への取り組みについて意見交換を行った。

フレーザ特使説明要旨

今から20年前、ニュージーランドでは経済改革を行い、政府による補助金の廃止など、農業支援方法を見直した。農家の人々への一番良い支援方法は、農業を国際的に競合できる、自立したものとなるようにすることであり、市場に適合した価格で農産物を提供できるようにすることである。

ニュージーランドでは、改革を実行するまでは農業に多大なコストを支払っていた。従来の仕組みを打破するのは困難を極めたが、農家に対する財政支援の方法を変えるという決断が変化を生み出した。そうした意味で、改革には国民が信頼できる前向きなリーダーが必要である。現在、欧州でも農業の効率性を高めるため、農業への国内支持施策を個別農産物に対する支援策から、品目横断的な支援策である農家に対する直接支払制度へと変化させてきている。

一方、日本には1億2,000万人もの消費者がおり、大量の農産物の供給を必要としている。農産物は消費地に近い地域で生産するほうが有利なのに、日本の食料自給率は40%にとどまっている。日本においても直接支払制度への移行のような改革に取り組んではどうか。

改革により農業にビジネスの考え方が持ち込まれると、日本の農業もマーケットシェアを獲得するためにはどういう品質のものを作るべきか、どういう広告をすべきかといった点を考えることになるだろう。ニュージーランドでは、一般消費者向けの羊肉に比して、レストラン向けのものや、骨なしの高級肉の生産が伸びるようになった。また、最近は羊数が減少する一方で、酪農牛の数は増えるなど、農家は生産性の高いものを志向するようになっている。こうした取り組みを促すのは市場価格というシグナルである。

WTOにおける交渉のうち、輸出補助金の撤廃に関する関係国の理解は進んできた。最も困難な課題は市場アクセスの改善、すなわち関税率の高い品目の引下げである。重要な農産物については時間がかかり、日本にとってコメの問題がセンシティブであることは理解している。柔軟に交渉することは必要だが、交渉を止めてはいけない。伝統的な米作といえども、日本国内でもさまざまな経営の改善に向けた取り組みが進められており、工夫をして合理化を進めるべきである。そのためには市場によるシグナルが働きやすいように、政府による農業支援方法を変えるべきである。

《担当:産業本部》

くりっぷ No.46 目次日本語のホームページ