なびげーたー

日米経済関係を考える

国際経済部長 中村 芳夫


"No man is an island." 英国の17世紀の詩人John Donneがいうように、この世界において、人は孤立して存在できず、相互に依存する関係は避けられない。このことは、当然のことながら、日米経済関係にも妥当する。

アメリカ委員会(委員長 槙原三菱商事社長)の調査が明らかにしたように、日米の産業間には合弁・業務提携・技術協力などを通じた相互依存関係が存在する。日米経済関係を考える際、このポジティブな関係を促進することが最優先とされなければならない。アメリカ委員会では、この視点にたって活動を進めており、今年は日米経済関係の実態をより明確に示す日米経済ハンドブックを作成すべく作業中である。

ところで、一昨年7月から日米政府間で行われている日米包括経済協議では、ことさら対立面が強調されてきた。昨年の10月初めに一応の決着をみたが、数値目標を巡っての議論に15カ月もかけてきた。しかし、最近、この協議の重点が規制緩和などの構造的問題へ移ってきているようである。わが国にとり、規制緩和が最優先政策課題であり、この点で日米の利害が一致する。規制の撤廃や緩和により、日本市場へのアクセスが一層改善されれば、日本市場の魅力は高まり、日米企業による新たな協力関係が生まれる。

日米の経済関係が深化していけば、誤解や相互理解の不足などから摩擦が生じてくるのは当然である。この摩擦を、健全な関係を損なうことなく、政治問題化せず管理していくことが肝要となり、それは民間の役割である。このためにも、民間経済界の対話がより重要である。

そこで、経団連では、昨年11月に豊田会長、関本副会長、槙原アメリカ委員長、小林外交問題委員長、三好事務総長がワシントンD.C.を訪問し、米国の有力な経済団体のビジネス・ラウンドテーブルとの会合を持った。会合では、幅広い日米経済関係、ウルグアイ・ラウンド合意の意義、アジア太平洋における日米協力などを中心に大局的な見地から意見交換を行った。今年の5月には、日本において次回会合が開催される予定である。

このように、民間経済界による建設的な対話を積み重ね、相互の信頼関係を深めていくことこそが、現に存在する日米の相互依存関係を強化していくためにも不可欠である。

最近、米国において対日関心度が低下しているともいわれており、また今年戦後50周年を迎える。このような状況下では、ポジティブな日米経済関係を広報していく必要性はこれまで以上に高まっている。この点で、経済広報センターと海外事業活動関連協議会の役割も極めて大きくなっていると思われる。


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