来賓挨拶

活力に満ちた社会へ向け、改革に取り組む

内閣総理大臣 村山 富市

村山 富市 内閣総理大臣


  1. 抜本的な構造改革の推進
  2. 現内閣が発足して早くも半年が経過したが、94年は歴史の大きな区切りの年であった。93年7月の総選挙を契機に政治は新しい時代に向かって激動の季節を迎えた。そして紆余曲折を経て94年6月、自社さきがけ連立政権が成立し、これにより55年体制は終結した。
    連立政権は切磋琢磨しながら自己改革を行い、改革の断行をその使命としてこの半年間に政治改革、被爆者援護法、WTO問題等、さまざまな課題を解決してきた。今後も行政改革、経済構造改革等の課題に取り組み、その成果を21世紀への展望に立った礎として行きたい。
    国内経済に関しては、減税が功を奏し個人消費は回復基調にあり、住宅および公共投資も堅調である。企業収益も持ち直しつつあり、景気低迷からはようやく抜け出しつつある。しかし一方で、雇用状況は依然として厳しく、設備投資にも元気はない。経済の先行きは不透明である。
    これまで右肩上がりの成長を前提としてきた日本経済は、アジア諸国の急成長、東欧諸国の自由主義経済圏への参加、欧米諸国経済の再活性化という国際環境の変化の中で、内外価格差や新規創業意欲の減退、さらには他国には類を見ない急速な高齢化の進展により、その競争力を失いつつある。対症療法的な施策ではなく、経済構造の抜本的な改革が必要である。
    行政改革についても同様である。現在の制度は今日の日本の繁栄を築き上げたが、民間企業がリストラに取り組む現在、行政も新しい時代の展開ということで、地方分権、特殊法人の見直し、情報公開に積極的に取り組み、個性豊かで活力にみちた社会を築くための効率的な組織としての改革を進めるべきである。行政改革委員会の委員長には、経団連の前副会長である飯田庸太郎氏にご就任いただいた。具体的な取り組みにあたって、その手腕を十分に発揮され、活躍されることを期待している。

  3. 創造性を発揮できる環境の整備
  4. また、アジア諸国の工業化が急速に進む現在、日本が国際社会との調和を図りつつ経済的発展を継続するためには、産業構造の転換が必要である。日本経済の競争力を殺ぐ内外価格差の縮小、さらには雇用の鍵を握る新たな産業分野の発展のため、産業構造転換雇用対策本部を設置し、私自身がその本部長に就任し、この問題に取り組んでいる。
    さらに民間企業の独創性を妨げるさまざまな規制に関しては、95年3月までに規制緩和5カ年計画を策定する予定である。経団連からも規制緩和に関してはさまざまな要望をいただいており、可能な限り採り入れ効果ある計画にしていきたい。
    新産業に関しては、意欲と創造性を持つ中小企業やベンチャービジネスを支援する環境整備の諸施策を、95年度予算にも盛り込んでいる。また若者や高齢者が出入りしやすい柔軟な労働市場の形成、未来のフロンティアである科学技術の振興、研究開発基盤の強化、高度情報化社会に向けたさまざまな施策に取り組んでいく所存である。

  5. 日本にふさわしい形での国際貢献
  6. 冷戦終了後、世界は変換期に特有の不透明さを示している。次の時代の展望は明確でない。このような状況において国際社会で日本の果たす役割は従来より大きくなり、まさに日本にふさわしい形での国際貢献が求められている。
    具体的には日本が目指すところである軍備なき世界の実現にむけ、核や大量破壊兵器の不拡散への努力、経済力や技術力を活かした環境、貧困、エイズ、人口等の問題への取り組み、さらには冷戦後の国際社会の平和の拠り所である国連への積極的協力等、より責任ある役割を分担していかなければならない。
    WTOは95年1月1日に発足するが、日本がその恩恵により経済的発展を享受することができた自由貿易体制の堅持と一層の発展に貢献していきたい。
    また11月、インドネシアでのAPECの非公式会議に出席したが、将来の発展に向けて各国とも、貿易と投資の自由化推進に協力していくことで合意を得た。95年は日本が議長国を務める予定であり、アジア太平洋地域の平和と安定、発展のために関係国とともに努力していきたい。

  7. 戦後50年を踏まえた新しい国づくり
  8. アメリカに関しては、日米は以前より政治、経済、文化のあらゆる面で深い関係にあり相互に不可欠な存在であり、より前向きな協力関係を築いていきたい。95年には渡米し、クリントン大統領と会談する予定である。忌憚のない意見交換を行い、戦後50年を一区切りとして長期的な日米関係の展望を見いだしてきたい。

    以上のように95年は、戦後50年の歴史を振り返った上で未来に向けて、「人にやさしい政治」を基本として、種々の課題の解決と新しい国づくりに取り組んでいく所存である。


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