農政問題委員会食品工業政策部会(部会長 浅田健太郎氏)/12月21日

食品工業における原料調達問題の改善に向けた政府の取り組みを要請


食品工業に対しては、国内農業保護の観点から安価な輸入原料等の調達に関する規制が行われている。一方で、円高の進行等により、安価な原料や労働力を求めて生産拠点を海外に移す動きが活発化している。そこで農政問題委員会食品工業政策部会では、農林水産省大臣官房の本田審議官を招き、食品工業政策の現状と課題につき説明を受けるとともに懇談し、食品工業における原料調達問題の改善に向けた踏み込んだ検討を求めた。

  1. 本田審議官説明要旨
    1. 農業・農村政策における食品産業の位置づけ
    2. 食品加工や外食といった食品産業は、総就業者数の1割強を雇用しており、農業とともに地域経済を支えている。また、国産食用農産物の約3分の1が食品産業に仕向けられており、国産農産物の販路としての役割も重視する必要がある。

      本年8月の農政審報告「新たな国際環境に対応した農政の展開方向」を踏まえ、農政審議会では、1年後とりまとめを目途に、2005年度を目標年次とする農産物の需要と生産の長期見通しの検討を9月から開始している。今後の施策の展開に当たっては、食品工業の発展を阻害することのないよう配慮し、国内農業と食品産業とが一体となって発展できる政策の仕組みを構築する必要があると考える。

    3. 食品工業の現状
    4. 円高の進行もあり、特に加工食品を中心に、食品輸入は持続的に増大している。このような情勢の下、食品工業の海外立地は増加する傾向にあり、とりわけアジアへの進出が著しい。食品工業の海外立地について、食品流通局では現在、食品産業関連約2,000社を対象にアンケート調査を実施中であり、本年度内に調査結果をとりまとめる予定である。

      国際化に加え、食品産業の構造変化をもたらす要因として、

      1. 情報・物流システムの高度化
      2. 食料消費構造とニーズの変化
      3. 国内原料供給構造の変化
      等が考えられる。

      食品流通局では現在、基礎素材食品、加工型食品、調理済食品・外食等の業種ごとに、これらの要因がどう作用するかについて分析を試みたいと考えているところである。

      現在の動きとしては、85年から92年にかけ、基礎素材食品の出荷額が減少傾向にある一方、加工型、調理済食品等については大幅に出荷額を伸ばしている。ただし、基礎素材食品分野においても、円高や原料作物の行政価格の引下げ等により、原材料使用額は減少しており、付加価値額は増加している。

    5. 最近の行政課題
    6. 食品産業に関わる最近の行政課題としてPL法施行、環境問題、品質問題、規制緩和等があげられる。

    7. 規制緩和の推進
    8. 政府では年度内を目途に規制緩和推進計画の策定作業を進めており、大いに議論していく必要があろう。

      価格政策については、国内農業の生産性向上に努めていく方針であり、価格決定ルールの問題はあるが、コスト削減の効果は川下にも波及するのではないか。

    9. フードシステムの高度化
    10. なお同省では、食品産業の競争力の強化と国産農産物の利用拡大の両立を目指し、農業生産・加工・流通・消費を含めたフードシステムの高度化を図ることとし、新たに予算措置を講じることにしている。

  2. 経団連側発言要旨
    1. 経団連では、80年代より一貫して食品工業における原料調達問題の改善を求めてきた。円高の進行やGATTウルグアイ・ラウンド合意の妥結に基づく製品輸入に対する関税の一層の引下げの決定により、食品工業をめぐる状況は厳しさを増している。にもかかわらず、ウルグアイ・ラウンド合意の取扱を審議する、農政審議会等の場では、この問題に関する踏み込んだ検討はほとんど行われず、事実上問題は積み残しとなった。

    2. 農業の自立と発展のため何らかの支援策が必要であり、農業と食品工業が車の両輪として今後とも共生していくべきであるという認識では農林水産省、経済界とも一致していると考える。今後は、食品工業の競争力強化と国産農産物の販路拡大の両立という政策課題の実現に向け、具体的な施策を講じていくことが肝要であり、価格支持制度等、現行の支援策のあり方に関する踏み込んだ検討が求められる。まずは11月にとりまとめた経団連意見書「脱規制社会に向けた実効ある規制緩和推進計画の策定を求める」で打ち出した規制緩和策の実現に取り組むよう求めたい。

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