なびげーたー

進む環境管理・監査システムの規格化

産業政策部長 太田 元


地球環境問題は総論から各論に移りつつある。とりわけ、企業にとって注目すべきは環境管理・監査システムの国際規格化の動きである。

92年リオで初の地球サミットが開催された。その1年以上前に、経団連は環境保全型社会の実現に向けて企業は自主的積極的に対応すべきだと訴えた憲章(「経団連地球環境憲章」)を発表し、会員に遵守方を働きかけてきた。
その後、環境基本法の制定(93年11月)、環境基本計画の作成(94年12月)に参加するとともに、廃棄物、環境管理、温暖化防止、環境と貿易、海外日系企業の環境配慮、国際協力、自然保護等のテーマについても憲章の精神に則って取り組んできた。

1.注目すべき環境をめぐる国際規格化


その中で、特にISO(国際標準化機構)における環境管理システムの規格化の動きに着目し、業界の専門家の派遣を通じて規格の草案づくりに積極的に参加してきた。
規格といってもSOxの排出基準のような政府の規制ではない。あくまで任意の規格で、受け入れるか否かは企業の自主的判断による。企業が環境負荷を継続して軽減していくためのシステムを確立する際の規格である。各企業は規格に沿って環境保全方針と計画を作り、これを実行に移し、問題があれば手直しをするシステムを導入する。そのシステムが規格に合致していると見做されれば環境に配慮した企業との認証が受けられる。早ければ来春にも正式なISO規格として発足する。
ISOの品質管理規格の経験からして、認証(監査)を受けないと、法制化を済ませたヨーロッパはじめ国際社会でビジネスがやりにくくなる可能性がある。対外取引がない企業もいずれは影響を受けるだろう。わが国では、昨秋、電機・電子業界が監査を行う組織(JACO)を発足させたが、他の業界も今後何らかの対応を迫られよう。こうした動きに合わせて、環境管理面での認定・認証制度を整備していく必要がある。
管理・監査を補う意味もあり、生産から廃棄までの全てのプロセスで環境影響を分析するLCA(ライフサイクルアセスメント)、環境ラベルについてもISO規格の導入に向けた検討が進んでいる。
企業は今後私企業としての自由度を維持しつつ、環境負荷の軽減に努め、内部の情報を一定の約束のもとに開示して、社会の信頼を得なければならないだろう。

2.わが国経済界の役割

わが国は産業公害をほぼ克服し、環境保全についても省エネ・省資源等多くの点で世界の最先端をいっており、大手企業を中心に環境への取り組みは各国の注目を集めている。この実績をベースに、行政・消費者の理解と協力を得つつ、環境保全と成長を統合した循環型社会経済の実現に努力することがわが国経済界に課された課題である。その際、ISOの規格が有力な手がかりになることは間違いない。


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