第102回景気動向専門部会 (司会 遠藤理財部長)/1月10日

設備投資の低迷、雇用過剰、円高など、過去の景気回復局面より厳しい


景気動向専門部会では、最近の経済動向について、関係省庁を交えて、過去の景気回復局面との相違を中心に、意見交換を行なった。景気は緩やかな回復過程にあるものの、設備投資の低迷、過剰雇用、円高、資産デフレの影響などから、過去の景気回復期よりも厳しい状況が続いている。

1.生産の回復ペースは遅い

  1. 鉱工業生産指数をみると、11月の生産は前年比5.9%増で、4カ月連続して前年を上回った。
  2. 過去の景気回復局面では、景気の谷から約1年たつと生産は大幅に増加していた。
    しかし、今回は、最終需要の弱さ、輸入品の増加などを反映して、未だに生産の回復ペースは遅い。また、在庫の積み増し局面の動きは鈍く、在庫調整は足踏みしている。

2.設備投資は低迷が続く

  1. 設備投資の先行指標である機械受注(民需、船舶・電力を除く)には、持ち直しの動きがみられる。
  2. 法人企業統計でも、製造業、非製造業とも設備投資のマイナス幅が縮小しており、下げ止まりの兆しが伺える。
  3. 過去の景気回復局面では、非製造業ならびに中小企業の設備投資が景気を先導する形で回復していた。
    しかし、今回は円高、資産デフレの影響に加え、低価格化現象による売上の低迷、輸入浸透度の上昇などから動意がみられず、第1次石油危機後よりも設備投資の回復が遅れている。
  4. 海外からの部品調達の拡大、住宅投資ならびに公共投資の下支え効果の低下、米国景気の減速などから、設備投資の回復力は弱いとみられる。
  5. 半導体、液晶などの設備投資は好調であるものの、輸送機械については、ようやく下げ止まりの兆しがうかがえる程度にすぎない。
    また素材分野では、設備投資の盛り上がりはみられない。
  6. マンションについては、供給過剰ならびに高額物件に動意がないこと、また、オフィスについては、賃料が弱含みで推移、高水準の空室率などから、新規の投資は期待できない。建設投資の回復は96年以降となろう。

3.雇用環境改善のペースは緩やか

  1. 生産の回復を反映して、所定外労働時間 は5カ月連続して前年を上回っており、またパートタイマーも増加している。雇用調整助成金の給付を受ける企業の割合も顕著に減少してきた。したがって、雇用情勢の最悪期は脱したと考えられる。
  2. しかし、完全失業率は11月が2.9%と依然として高水準が続いている。とりわけ、中高齢者を中心とした失業者が目立つ。
  3. 過去の景気回復期では、サービス、卸売・小売業が雇用拡大を先導していた。
    しかし、今回は、大企業における非製造業のホワイトカラーの過剰感が強く、また、非製造業の雇用吸収力が弱いため、雇用環境の改善ペースは非常に緩やかである。

4.株式市場、不動産市場は停滞

  1. 企業収益は緩やかに回復してきているものの、日本経済の先行きに対する不透明感が強いことから、株式市場には活気が見られない。
  2. 住宅地の地価については、ほぼ底を打った感があるが、ここにきて大都市郊外における商用地の住宅地への転用の増加に伴い弱含みとなっている。商用地の地価については、依然として低下傾向に歯止めがかかっていない。


<新年経済の展望と課題に関するアンケート調査結果のポイント>

  1. 95年度の企業業績については、「回復に向かうが低水準」との回答が7割以上を占める。とくに非製造業の業績の回復が遅れている。
  2. 95年度の予想成長率は平均1.8%であるのに対し、望ましい成長率は3.0%と、乖離がみられる。
  3. 適正レートは1ドル=110円〜120円との回答が56.8%を占め、単純平均すると113円となる。一方、95年の予想円レートの単純平均は101円となる。
  4. 95年度の設備投資について、「94年度並み」との回答が49.6%、「94年度に比べ減少」と回答する企業が26.1%であり、慎重な姿勢が多い。
  5. 過剰雇用を抱えている企業は50.7%に達しており、とくに製造業で多い。


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