なびげーたー

金融空洞化問題を考える

理財部長 遠藤 博志


金融の空洞化がわが国経済の重要問題として論議されている。経団連でのこれまでの検討をふまえて、空洞化の原因、問題点、解決策をまとめてみた。

空洞化の定義については諸説あるが、定義はともかく、米・英の市場に加えて、アジア諸国の参入により、金融センター間の競争が激化する中で、東京市場が相対的に機能低下をきたしてきている。
空洞化を字義に則していえば、わが国の市場があるにもかかわらず、わが国企業等が外国の市場に依存する度合いを高め、また外国企業等も日本市場を使わなくなるという両面がある。
空洞化の原因としては、円ドル委員会などの外圧により、金融の自由化・国際化をすすめてきたが、市場間の競争激化の中で、競争に打ち勝つほどの進展が見られていないことがあげられる。
バブル崩壊により日本経済が低迷してきたことの反映であるとの見方もある。しかし、より根本的な問題として規制緩和の不徹底(金融行政の不透明性)、顧客ニーズに応ずる売買手法、手数料税制の面での金融サービスの競争力の弱さなどがあり、これが経済の低迷によって浮き彫りにされたということのようである。
産業の空洞化による雇用問題、中小企業問題の深刻化が懸念されるところであるが、これに対しては望ましい産業構造のヴィジョンの下での国際分業の進展、新規産業・事業の育成等、構造の転換を図っていく必要がある。その場合、産業と金融は相互依存の関係にあり、金融の空洞化を放置するわけにはいかない。安定的な資金調達のためにも海外の市場に依存するわけにはいかない。
金融サービス業は、わが国経済にとって戦略的重要性をもつといわれる。金融センターに集中してくる経済情報の重要性の観点からも、金融の空洞化は看過しえない。黒字大国日本としては資金の国際還流という国際的責務もある。
金融空洞化には以上のような問題があることから、これの回避のためには、国際的レベルに向けて規制緩和、有取税などの税制の見直し、諸手数料の軽減が求められる。政府は、国の重要政策のひとつとして空洞化・活性化策をとりあげ、金融・資本市場改革の目標、手順を明確にした日本版ビッグ・バンを打ち出すべきではないか。
規制緩和によって空洞化はかなりの程度解決されるとみられている。当面、金融業務の一層の自由化、年金基金の運用規制の弾力化(株式の運用比率の引上げ)、上場・店頭公開基準の緩和、適債基準の撤廃、時価発行増資の規制緩和は早急に実現することが望まれる。


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