阪神大震災により、わが国の地震防災の前提の大転換が必要であることが明らかになった。今回の震災で欠如していたのは指揮官の想像力である。震災被害のひどい地域からは、通常まともな報告はこない。大都市直下の真冬の大地震で、何が起きるかを即座にイメージして、的確な判断と果敢な意思決定を行うことが必要であった。
今回の場合、48時間以内の震災対応の目標は、(1)救急医療、(2)閉じ込められ者の救出、(3)火災鎮圧、(4)輸送であったが、どの機関もこれらの作戦目標を立てなかった。
しかも戦場のような状況の中で、部隊の逐次投入(事態を甘く見て少しずつ救援部隊を送る)、女性、子供、老人等の巻き込み、無意味な戦術への固執(陸路での輸送に固執)といった非常時の常識に背く諸行動をとったのは問題であった。
問われたのは、工学的耐震性ではなく、オペレーション能力の耐震性ではなかろうか。
被災地の中で、30万人もの避難者を抱えることはできない。移動可能な避難者は、可能な限り被災地外に出ることが必要である。
今後、復興過程においては、(1)建築制限をかけても被災地内にバラックが林立する、(2)都市復興計画をめぐり百家争鳴の議論が起こる、(3)市民と行政が合意した地区から順次復興する、といったことが想定される。都市計画などの権限が自治体に下ろされて以降、初めての震災復興であり、関係者の合意形成は極めて大変である。
ここ1〜2か月の間では、(1)携帯電話等生活支援機器の寄付、(2)疎開の促進、(3)ごみ処理、し尿処理への協力、(4)よろず相談センターの開設、(5)区分所有集合住宅問題の解決に経済界は協力すべきである。
また今後の市街地復興においては、太陽光発電や雨水貯留など、自立可能な機能の導入や交通基盤の複線化等都市のバックアップ機能の強化について協力すべきである。
さらに、生活安全空間の形成という観点から、家具等と壁との固定化などを、機器および建築物両面から対策を講ずるようにしてほしい。