資源・エネルギー対策委員会(委員長 日下部悦二氏)/1月19日

変わりつつあるIEAの役割


本年5月に開催予定のIEA(国際エネルギー機関)閣僚理事会の打合せのため、IEA新事務局長のロバート・プリドル氏が来日。経団連では、同氏を招き、今後のIEAの役割等について懇談した。
プリドル局長は「IEAを取り巻く環境が大きく変化する中、非OECD諸国との関係強化が重要な課題となる」などと発言した。

I. プリドル事務局長説明要旨

プリドル事務局長
  1. IEAを取り巻く環境の変化

    IEAは、第1次石油危機後の国際エネルギー情勢に対応するため、1974年に設立された国際機関であり、当時は、石油危機に対して、石油消費国間の国際的協力が不可欠であるという認識のもと、消費国の利益を守ることが主な役割であった。
    設立当時と比べ、旧ソ連の崩壊、中東での新たな国際関係の構築など、政治面での劇的な変化や、気候変動枠組み条約に見られる環境問題の顕在化など、IEAを取り巻く環境も時代の経過とともに大きく変化している。

  2. 今後の基本テーマ 〜3つの“E”〜

    こうした様々な変化の中で、IEAの役割も大きく変わってきている。最重要テーマとなるのが「エネルギー安全保障(Energy Security)」「エネルギーと環境(Energy and Environment)」「エネルギーと経済成長(Energy and Economic Growth)」という3つの“E”であり、IEAとしては、これらのテーマに関して、各国政府の施策に対して長期的な展望を提供することとしている。

  3. 当面の課題

    IEAが作成した「WORLD ENERGY OUTLOOK 1994 EDITION(1994.9)」によると、今後、世界全体のエネルギー需要の増加傾向が続く中で、石油に対する需要はOECD諸国から非OECD諸国に移るとしており、特にアジアにおいて、大幅に増加すると予測している。また、温室効果ガスの排出量についても、2010年までの中国における増加量は、OECD諸国全体の増加量に匹敵すると予想している。
    これらの状況に鑑み、IEAは当面の課題として、(1)地球環境問題、(2)非OECD諸国との関係強化に取り組まなくてはならない。地球環境問題に関しては、気候変動枠組み条約における「1990年代末までに二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出量を1990年レベルまで戻す」というコミットメントに対する各国の取り組みについて、新技術などの分野で支援が可能であると思われる。また、今後のエネルギー情勢を考える上で、OPECを含む非OECD諸国との関係強化を図ることが重要となってくる。

II. 懇談

経団連側:
長期的に原子力発電の重要度が増すことが考えられるが、IEAとしては、どう取り組むのか。

プリドル氏:
原子力は安全の確保が重要であり、各国は独自の施策に基づき、計画を進めている。IEAが原子力について、より積極的に取り組む場合、各国のコンセンサスが前提となる。

経団連側:
天然ガスについての取り組みは。

プリドル氏:
現在、長期の需給バランス、政治的脅威や技術的な問題による供給途絶の可能性など、天然ガス供給に関する安全保障について分析中である。今年半ばに報告書が出る。


最近のIEAの活動状況

  1. エネルギー安全保障の維持・強化
  2. IEA域外国への対応
  3. 地球環境問題への対応

IEA事務局の組織図


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