IEAは、第1次石油危機後の国際エネルギー情勢に対応するため、1974年に設立された国際機関であり、当時は、石油危機に対して、石油消費国間の国際的協力が不可欠であるという認識のもと、消費国の利益を守ることが主な役割であった。
設立当時と比べ、旧ソ連の崩壊、中東での新たな国際関係の構築など、政治面での劇的な変化や、気候変動枠組み条約に見られる環境問題の顕在化など、IEAを取り巻く環境も時代の経過とともに大きく変化している。
こうした様々な変化の中で、IEAの役割も大きく変わってきている。最重要テーマとなるのが「エネルギー安全保障(Energy Security)」「エネルギーと環境(Energy and Environment)」「エネルギーと経済成長(Energy and Economic Growth)」という3つの“E”であり、IEAとしては、これらのテーマに関して、各国政府の施策に対して長期的な展望を提供することとしている。
IEAが作成した「WORLD ENERGY OUTLOOK 1994 EDITION(1994.9)」によると、今後、世界全体のエネルギー需要の増加傾向が続く中で、石油に対する需要はOECD諸国から非OECD諸国に移るとしており、特にアジアにおいて、大幅に増加すると予測している。また、温室効果ガスの排出量についても、2010年までの中国における増加量は、OECD諸国全体の増加量に匹敵すると予想している。
これらの状況に鑑み、IEAは当面の課題として、(1)地球環境問題、(2)非OECD諸国との関係強化に取り組まなくてはならない。地球環境問題に関しては、気候変動枠組み条約における「1990年代末までに二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出量を1990年レベルまで戻す」というコミットメントに対する各国の取り組みについて、新技術などの分野で支援が可能であると思われる。また、今後のエネルギー情勢を考える上で、OPECを含む非OECD諸国との関係強化を図ることが重要となってくる。