起業に際し特に重要なのは、独創的な商品作りをすることである。当社の開発したLSIカードは、フロッピーディスクと同じ役割をする外部記憶装置で、少々手荒く扱っても壊れることがないという特徴をもつ世界初の無接点方式ICカードである。現在、工作機械等の産業用機械やJRの車輌運転システム等に採用されている。
海外のベンチャービジネスの研究開発を見るたびに、日本人は夜なべ仕事は得意だが、独創的な発想についてはあまり得意ではないと感じる。これからは、独創的な発想の芽を摘むことのないよう、社会一般に新しい評価基準を作る必要がある。
大企業には、中小企業への資金援助等、肩を貸すことを検討してほしい。
当社では、多くの大企業とは異なり、新入社員や中途採用社員に対して早いうちに失敗をする機会を与えている。失敗を通じて責任の重さを実感させた上で、責任の持てる能力の育成を図っている。
ベンチャービジネスの育成のためには、ベンチャーキャピタリスト、すなわち、店頭公開直前の企業に投資して少しでもキャピタルゲインを得ようとするのではなく、初期段階のいくつかの企業に分散投資をして利益を得ることを考える、インキュベータキャピタルの育成が必要である。そのためには、資本市場全体を見直し、リスクもあるが、キャピタルゲイン等の見返りが早期かつ多額に得られる、自己責任原則に基づく資本市場をつくることが必要である。
創造性・独創性については、日本人に資質がないのではなく、講義を聞いて答えを暗記する方式の学校教育に問題がある。これからは、先生に対して質問ができるような雰囲気作りが重要である。
企業内ベンチャーは、サラリーマンをしていた者への動機づけや、ベンチャーマインドの維持が難しいという特徴がある。当社は88年に開発会社として設立され、親会社は、新規事業分野への進出という意味に加え、製品開発という本社にない機能を期待した。私としては事業欲もあったが、それ以上に、中途採用、実力主義、年俸制という人事制度の実験をしてみたいという欲求がベンチャーマインドの喚起・維持につながった。設立当初、親会社から5人が来たが、人事ローテーションの一環として捉えていた人が多く、骨を埋めるというほどの意思統一はできていなかった。次期社長は、独自に採用した人材から選ぶつもりである。
91〜92年には、小規模ながら無借金経営の優良会社になった。その原因として、