経団連緊急提言/2月6日

阪神大震災被災地の復旧・復興のための緊急提言


経団連では、自ら救援活動に取り組むとともに、会員企業・団体に対して最大限の支援・協力をお願いしている。今後は緊急を要するライフラインや交通基盤の復旧と併せ、効果的な被災地の復興策の立案、提言を行うとともに、経済界の協力が期待される分野を早急にとりまとめることが重要であると考え、標記緊急提言をとりまとめ、政府等関係方面に建議した。

基本的な考え方

当面、被災地において最低限必要な居住・生活基盤の整備やライフライン・交通インフラの復旧を急ぎ、所要の財源を確保する観点から、政府は、
  1. 一刻も早く必要かつ十分な補正予算の編成・成立を図る、
  2. 財政的な裏付けもある復興計画を特別立法により早期に策定する、
  3. 復旧・復興事業の財源を捻出するため、政府は各分野にわたるできる限りの経費節減、不急の事業からの予算の付け替えなど、あらゆる措置を講ずる、
  4. 被災者の多様な要望に迅速かつ的確に応えていくため、自治体等へ思い切って権限を移管する、
ことが不可欠である。

1.救援活動の円滑化

行政・企業・市民ボランティアの連携強化を図る観点から、ボランティア・グループ等が連絡、打合せ等のできる本部を新たに設け、救援の円滑化を図るべきである。

2.居住・生活環境の改善

復旧・復興事業が展開される地域の外に、被災者が最低限のプライバシーが守れ、雨露や寒さもしのげる仮設住宅や一時居住施設を用意するため、周辺の自治体においても仮設住宅の建設や公営住宅の活用を図るべきである。
経団連でも、会員各社に対して、仮設住宅建設用用地の提供・貸与をお願いする。

3.医療機関の再建と被災者のメンタルケアの充実

地域の医療機関の機能を回復させるため、政府、自治体は、官民の医療施設の修復、医療機器等の配備等に全力をあげるべきである。

4.幹線道路、鉄道、港湾等の早期復旧と代替ルートの確保

阪神地域の幹線道路、鉄道、港湾(公共岸壁、民間専用岸壁を問わず)等の応急的な復旧工事を進める観点から、国は、関連の事業主体に対し無利子融資や復旧事業費に対する建設費補助など、思い切った財政支援を行うべきである。
経団連としても、周辺の都市に民間専用岸壁を所有している会員各社に対して、被災企業の物資輸送のため専用岸壁を一部開放するようお願いする。

5.住民生活の安定化や商工事業者の施設復旧、事業再開への支援

国、地方を通じた無利子または超低利の長期無担保融資制度の新設、既往債務償還の繰延べ、市中銀行の窓口における融資の事務代行の実施等の措置を講ずるとともに、被災者に対する国税、地方税の一層の減免措置を講ずべきである。
経団連としても、会員の金融機関等に対して、長期・低利の無担保融資の実施や被災者の既往債務の取扱い等につき、引き続き極力弾力的な対応を図るようお願いする。

6.被災地における商業・流通機能の回復

地元商業事業者等による青空市場(バザール)や仮設店舗市場を開設すべく、政府、自治体は用地の整備・提供などの面で支援を行うべきである。

7.義務教育の正常化に向けた環境の整備

政府、自治体は、仮設住宅の早期建設を前提として、避難所となっている小中学校の本来機能の回復等に努めるべきである。

8.倒壊・焼失した建築物等の撤去と瓦礫処分の促進

特に瓦礫の処分について、被災地の自治体が相互に連携をとりながら、早急にその基本方針(処分の方法、処分地の選定等)を固める必要がある。

9.土地区画整理事業、市街地再開発事業の推進

今後、市街地の復興を進めるために、土地区画整理事業や市街地再開発事業等を実施することにより被災地の都市づくりを一からやり直す必要がある。政府、自治体は、建築・土木、都市計画、都市防災などの専門家の意見を十分採り入れながら、市街地復興に資する新たな制度づくりに取り組むとともに、大胆な用途地域の変更を図り、新しいコンセプトの多様な市街地復興事業を推進していく必要がある。
経団連としても、会員各社に計画づくりへの積極的な支援や超長期融資の導入、中核施設建設への資金協力などを行うようお願いする。

10.区分所有集合住宅に居住する被災者等の救済

今後、被災した区分所有集合住宅の修理、建て替え等の費用負担と居住者間の合意形成が大きな問題になることから、自治体がまず、居住者間の権利調整に積極的に取り組むべきである。また政府、自治体は、建て替えを行う所有者に対する長期・超低利の融資制度の創設、並びに容積率制限等の規制緩和、土地区画整理事業への組み込みなど、所有者の建て替え意欲を高める措置を講ずべきである。

11.産業施設の復旧・操業再開への税制・金融面での支援

被災地住民に職場を提供し、生活基盤を安定させるために、早期に製造業や商業、金融、運輸などの非製造業等の関連施設の復旧が図られるよう、事業者に対し、一定の期間、地価税、固定資産税等を減免するとともに、法人税の欠損金の繰り戻しによる還付等の措置を講ずべきである。金融面でも、国、地方を通じた長期・超低利の融資制度を設け、融資期間・据置期間の延長、担保評価の弾力化等の措置を講ずる一方、既往債務償還の繰延べ等を措置すべきである。

12.被災地における電力、ガス、通信事業者に対する支援

電力、ガス、通信事業者がライフラインの復旧に巨額の資金負担を負う実態に鑑み、国は長期・超低利融資に加え、民間金融機関からの借入、社債発行に対する債務保証等の支援措置を実施する方向で検討すべきである。

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