第103回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/2月2日

阪神大震災のわが国経済活動への影響は大きい


景気動向専門部会では、最近の経済動向について、関係省庁から説明を聞くとともに、阪神大震災のわが国経済に与える影響を中心に意見交換を行なった。震災の経済に与える影響は大きいが、復旧作業が円滑に進展すれば景気回復の道筋は途絶えることはないという見方がある。しかし、復興需要が一巡した後には再び景気が落ち込む惧れもある。

  1. 生産活動にマイナスの影響
    1. 大震災により、生産活動はマイナスの影響を受けている。現在、他工場へ生産の代替が進んでいるが、94年度の企業収益、経済成長率は若干、下方に修正される。
    2. 95年度以降は、復興需要により、わが国経済の需要が増加すると見込まれている。また、被災地以外の都市部においても老朽化した建築物の建て替え需要が拡大する可能性がある。復旧事業が円滑に進展すれば、景気回復の道筋が途切れることはない。
    3. ただし、震災の被害が大きいことに伴い消費マインドが低迷する惧れもあることから、復興需要の波及効果が弱まる可能性もある。また、復興需要が一巡した後は需要が落ちるため、96、97年度に向けて経済が順調に拡大することは期待しにくい。

  2. 物流面への被害は大きい
  3. 兵庫県南部は、現時点で物流の3割程度が被害を受けているとみられる。被災地の迅速な復旧が急務であると同時に他地域における交通網の集中地域の安全点検、補強工事などが必要である。

  4. 長期金利への影響が懸念
    1. 長期金利は、震災に伴う金利先高観が払拭されたとしても、世界的な実質長期金利の上昇などから、わが国の経済実態を反映した水準まで低下することは期待できない。
    2. 仮に、復興財源として国債が発行されるとしても、数年間にわたり、分散発行されるため、長期金利が上昇する可能性は少ないと思われる。しかし、発行対象が拡大すると、長期金利への影響も懸念される。

  5. 当面、為替は株価と連動して推移
  6. 復興需要期待が、外国人投資家の対日株式投資姿勢に影響を与える可能性があり、当面、為替相場は株価と連動した形で動くと思われる。また、メキシコ通貨情勢は、一応落ちつきつつあるものの、なお予断を許さない状況にある。

  7. 物価への影響は軽微
  8. 阪神大震災発生直後には、天然ゴムと非鉄の価格が、復興需要への思惑から上昇したが、思惑買いが一巡した後は落ちついている。また生鮮3品(野菜・果物・魚介類)の価格は、神戸ならびにその周辺地域において、弱含みで推移している。

  9. 被災地域における雇用への影響を懸念
  10. 今後は、被災地域において事業の停止、廃止などから一時的に求職者の増加が見込まれ、雇用に大きな影響を与える懸念がある。


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