ミャンマー研究会(座長 春名和雄氏)/2月2日

ミャンマー研究会・第1回会合を開催


経団連では昨年6月、バングラデシュとミャンマーに経済調査ミッション(団長 春名和雄丸紅会長)を派遣し、両国の政治経済状況を調査してきた。その後、会員企業のミャンマーに対する関心が高まってきたことから、新たにミャンマー研究会(座長 春名和雄氏)を設置することを決定した。
ミャンマー研究会の第1回会合では、ソー・ウィン駐日ミャンマー大使から最近のミャンマーの経済情勢を中心に説明を聞き、国内の政治問題や対外関係について意見交換を行なった。

I. 市場経済への移行のなかで
  − ソー・ウィン大使の説明から −

  1. ミャンマー経済概況
    1. 1988年のSLORC(国家法秩序回復評議会)政権成立以来、ミャンマーは中央計画経済から開放市場経済への移行を図っている。88年度までは3年連続のマイナス成長であったが、諸政策の実施の結果、89年度と90年度はそれぞれ3.7%、2.8%と経済はやや持ち直した。
    2. 1992年度のGDP目標は538億6,600万チャットであったが、前年比10.9%の経済成長の結果、551億7,000万チャットとなった。これは、投資が前年比14.1%、輸出が同26.8%と高い伸びを示した結果である。93年度は6%成長と見込まれている。

  2. ミャンマーの有望経済分野
  3. ミャンマーにおける経済機会は豊富であるが、本日は農林業、エネルギーおよび観光の3分野に絞ってお話したい。

    農林業
    農業はGDPの39%を占める主要産業である。栽培作物はコメ、小麦、メイズ、綿、ジュート、ゴム、タバコ、香料など60種以上にのぼるが、耕作地は国土のわずか12%にすぎない。
    ミャンマーでは、外国人でも外国投資委員会に申請すれば、耕作できる。プランテーション作物は5,000エーカー、果樹3,000エーカー、季節作物1,000エーカーまで土地を借りることができる。また、養殖業の場合2,000エーカー、牛などの飼育の場合5,000エーカーまでリースできる。土地のリース期間は最長30年であるが、延長も可能である。季節作物の場合は、期間の制限がない。土地税は2〜8年間、所得税は3年間免除される。
    ミャンマーは森林資源に恵まれている(国土の約51%が森林)。中でもチーク林は成長樹林の10%を占め、610万ヘクタールにも達する。チークの世界貿易ではミャンマーは大きなシェアを占める。年間生産量は約30万ホップストンである。
    チークの伐採と輸出は国営の木材公社が行っているが、既存施設を向上させるとともに、国の民営化政策に沿うべく合弁を推進している。外国投資家は、国営企業との合弁、民間企業との合弁、あるいは100%出資のいずれの形態でも投資できる。
    ミャンマーはこの地域では唯一丸太輸出を認めているが、近い将来段階的に廃止することになろう。したがって、これから投資する企業は丸太ではなく、木材関連のビジネスに基本を置くよう望みたい。

    エネルギー
    原油・天然ガスの探査、開発、生産および輸送はミャンマー石油ガス会社(MOGE)が行なっている。同社は陸上の14の油田ガス田を操業している。石油生産は主にミャンマーの中央地帯で行なっているが、最近試掘したミャナウン油田では石油とガスを産出した。現在、天然ガスは発電用と産業用にヤンゴンとピエーに送られている。
    MOGEは1989年以来、石油探査・生産のために、多国籍企業14社と20の生産シェアリング契約を結んだ。現在、6グループがオンショアで、またトタール/ユノカルとテキサコ/プレミア/日石の2つのグループがオフショアで探査を続け、成果をあげている。

    観光
    ミャンマーは1000年の文明を有し、多様かつ豊富な文化財を誇っている。ミャンマー王朝の最後の首都であるマンダレーは、多数の僧院や伝統芸術・工芸で有名である。ヤンゴンのシュエダゴン・パゴダなど、観光名所にはこと欠かない。
    1996年は「ミャンマー観光年」と銘打って、現在そのキャンペーンに取り組んでいる。調整機関として観光業開発管理委員会を設置したが、その委員長にはSLORCの第1書記が就任している。この委員会の指導の下、インフラや宿泊施設、輸送手段の改善を進めている。また、エア・マンダレーや国際級ホテルの新設により、50万人の観光客に対応できるようになっている。
    観光業への投資は内外からなされ、ホテルの客室はこの数年で300%増加している。1994年6月現在、外国投資は4億8,000万米ドルに達している。

II. 残された課題
  − 質疑応答から −

経団連:
アメリカとの関係、スーチー女史の問題、ヤンゴン港の老朽化問題、麻薬の取締りはどうなっているのか。
大使館側:
アメリカとの関係のみならず、あらゆる国との関係を強化していきたい。かつてはアメリカ向けの輸出が多かったが、最近ではアジア、中でも東南アジアとの貿易、投資関係が緊密になっており、こうした近隣諸国との関係を大事にしていきたい。
スーチー女史の拘束は政治的なものではなく、既存の法律に基づいたものである。承知のように、スーチー女史はわれらが建国の父であるアウン・サン将軍の娘であり、われわれは女史を家族の一員、妹のように思っている。スーチー女史との会見はうまくいっており、これからも続けていく。
ヤンゴン港の施設は老朽化しており、新たにティラワに外洋港を建設する予定である。
麻薬問題はミャンマーのみならず国際的問題であり、わが国は全力をあげて取り組んでいる。ただ、麻薬栽培を行っているのは貧困層であり、彼らが現金収入を得られるように代替手段を与えてやらねばならない。

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