訪ASEAN・ベトナムミッション勉強会・結団式/1月30日、2月1日、7日

訪ASEAN(第一次)・ベトナム経団連ミッションに向け外務・通産省、関係大使と懇談


経団連では、アジア太平洋地域のさらなる発展を担う重要な国々であり、近年わが国との結びつきを深めているASEAN諸国とベトナムに、豊田会長を団長とし、副会長、関係委員長からなるミッションを2月15〜26日と4月10〜21日の2回に分けて派遣し、各国の政府、経済界首脳との間で大所高所の政策対話を行うこととしている。
そこで、ミッション派遣を前に、通産省の細川通商政策局長、外務省の藤崎参事官、2月に訪問するシンガポール、タイ、ベトナムの各駐日大使と意見交換を行った。

I. 細川通商政策局長説明要旨

  1. 日本から輸入した部品、素材をアジア諸国で加工し、米国市場に輸出するというのが従来のアジア太平洋地域における国際分業であったが、最近はアジア域内の相互依存度が急速に高まっている。

  2. ASEANの日本企業に対する主な要望は、(1)現地社員の幹部への積極的な登用、(2)現地での株式の上場、(3)中小企業育成への支援の3つである。とくに中小企業の育成はアジア各国にとって切実な課題である。

  3. 国民の資質の高さもあって、ベトナムの今後の発展に対する期待は大きく、投資先として有望視されているが、効率、インフラ整備の面で大きく立ち遅れている。

  4. 昨年のAPECインドネシア会議で、貿易・投資の自由化の方向が示されたが、「自由化」の明確な定義づけはなされていない。日本は「自由化」と「開発協力」を車の両輪として並行して推進すべきと考える。APEC大阪会議に対し過大な期待があるが、できることから実行すればよい。

II. 藤崎参事官説明要旨

  1. 東南アジアでは長年の戦乱が終結し、目覚ましい経済発展が続いており(ASEAN+ベトナムの実質経済成長率は7.0%)、域内の貿易が拡大している(ASEAN内貿易は80年から93年にかけて3倍増)。

  2. ロシアのプレゼンスの消失により、「力の空白」に対する懸念が広がっており、中国、ASEANに軍備拡張の動きがある。

  3. アジア太平洋地域協力の中心は今後もAPECである。きたる大阪会議では、「ボゴール宣言」を受けて何らかの「行動指針」を取りまとめたい。

  4. 本年7月の「ASEAN外相会議」でベトナムのASEAN加盟が実現するだろう。ASEANが目指す自由化にベトナムが加われるかどうかが課題だが、ある程度の猶予が与えられるものと思う。

  5. 政府レベルの協議で出されるASEANの日本に対する懸念は、(1)ASEANの対日貿易赤字の拡大、(2)円高が円借款の返済に与える影響、(3)日本の投資先のASEANから中国へのシフトの3つである。

  6. 日本とシンガポールの関係は極めて良好であり、シンガポールの経済発展に伴い、両国の共同による途上国への経済協力を検討し始めている。
    タイの抱える大きな課題は、(1)農村と都市部の格差、(2)バンコクの交通渋滞、(3)地方自治の3つである。タイ経済は引き続き好調だが(94年の実質経済成長率は8.4%となる見込み)、貿易赤字は拡大し続けており、裾野産業の育成等を通ずる産業構造の変換により、その解決を図らねばならない。
    ベトナムは「ドイモイ」の影響が政治、経済、外交ほかあらゆる面に及んでいる。その結果アメリカとの関係を重視するようになり、本年1月、米越間で連絡事務所の相互開設が合意された。近年中越間で首脳の相互訪問が行われており、友好ムードが高まっているが、領土・国境問題が不安定要因として残っている。
    「インドシナ総合開発フォーラム」は、インドシナ地域全体の調和のとれた開発を図るため関係国・国際機関が協議する場である。本年2月26〜27日、東京で第1回閣僚会議を開催し、その成果を踏まえて、3月に民間シンポジウムを開催する予定であり(於 バンコク)、協力を得たい。

III. リン・駐日シンガポール大使説明要旨

シンガポールにとって日本の存在は極めて大きい(第2位のインベスター、第3位の貿易パートナー)。
シンガポール経済の情報、サービス化が進んでいるが、製造部門と情報、通信、サービス部門は補完関係にあるので、今後も製造業の重要性は変わらない。
国内市場が小さいため、企業の海外進出を奨励している(「地域化政策」)。中国の蘇州ほかでの工業団地の造成、インドでのテクノ・パークの建設等のプロジェクトが進んでおり、日本企業の協力を期待する。

IV. チャワット駐日タイ大使説明要旨

AFTA(ASEAN自由貿易地域)の実現は域内外に大きな影響を与えるものであり、日本の協力を期待する。
タイはインドシナ開発に積極的に参画していく方針であり、「インドシナ総合開発フォーラム」は、経済協力を効率化させるための重要な討議の場と認識している。
94年、タイ経済は堅調(成長率8.4%)であったが、今後もこのペースを維持するためには、インフラの整備、熟練労働力の養成が必要不可欠である。
日本に対しては、一層の技術移転を期待する。都市と農村の経済格差の是正を図っており、特に地方への投資を歓迎する。

V. チェン駐日ベトナム大使説明要旨

ベトナム経済は高成長を続けているが、今後これを維持していくためには 行政手続きの簡素化、資本の蓄積、通貨金融制度の改革、税制改革、インフレの抑制、人材育成等に引き続き努力する必要がある。
外資優遇策を実施した結果、100億ドルの外資が集まり、1,000件のプロジェクトに着手している。今後は輸出志向型産業、製造業の育成に力を入れたい。また、国全体の発展を図るために、北部、中部、南部を重工業地域として、工業地帯の建設を進めている。


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