経済協力委員会国際協力プロジェクト部会(部会長 由布震一氏)/2月9日

欧亜大陸橋「現代版シルクロード」の開発に取り組む中国


中国では現在、国家科学技術委員会と国家計画委員会が中心となり、ユーラシア大陸を東西に陸路で結ぶ欧亜大陸橋(江蘇省連雲港よりウルムチを通り中央アジアを経由して欧州を結ぶ鉄道)の沿線開発に取り組んでいる。
中国は「三沿政策(沿海、沿江、〈揚子江流域〉、沿辺/沿境)」を経済社会開発の基本政策として掲げている。本計画は第4の重要開発地域である「沿橋」として重視されている。
国際協力プロジェクト部会では、国家科学技術委員会政策法規・体制改革局長の段瑞春氏を招き、同国の開発プロジェクトについて説明を聴取した。

段局長説明要旨

  1. 中国の3大開発プロジェクト
  2. 中国は21世紀に向けた大型開発プロジェクトとして、
    1. 図們江流域開発、
    2. メコン川流域開発、
    3. 欧亜大陸橋沿線開発
    の3つを掲げている。
    図們江流域開発については、中国、ロシア、北朝鮮が当該地域に跨がる自由経済区の建設を強く望むとともに、韓国、モンゴルも貿易拡大に繋がるとしてこの計画に関心を示している。図們江流域に国際公司を設立し、各国を跨ぐ経済特区の開発等を進める計画もある。
    本年、ロシア、中国、北朝鮮からなる調整委員会の初会合が開催される予定であり、当該地域開発に向けた大きな一歩を踏み出すことになろう。
    メコン川流域の開発プロジェクトについては、UNDPの支援を得て、昨年国家科学技術委員会と国家計画委員会がタイ、ラオス、ベトナム、ミャンマーに代表団を派遣し、当該地域の開発につき意見交換を行なった。各国とも本件につき積極的な姿勢をみせていた。
    欧亜大陸橋開発プロジェクトについては、90年に新疆ウイグルのアラシャンコとカザフスタンのドルジバを繋ぐ鉄道路が開通し、これにより中国江蘇省連雲港よりウルムチを通過し中央アジアを経由して欧州を結ぶ鉄道が完成した。これを契機として沿線地域の開発に積極的に取り組んでいる。本計画はUNDPの支援を受けている。92年に沿線地域の諸国が集まり、光ファイバー網の建設につき合意した。96年には第1期工事が終了する予定である。

  3. 「現代シルクロード」の開発に向けた中国政府の取組み
  4. 本計画を実施する際に考慮すべき項目としては、
    1. 沿線諸国が、本開発計画によって享受し得る利益の保証、
    2. 日本をはじめとする沿線諸国以外の国の参加の可能性、
    3. 国家間を跨ぐプロジェクトの実施に必要とされるソフトならびにハード両面の整備、
    4. 専門家・技術者等の投入、新疆ウイグル自治区ならびに中央アジアでの人材育成の推進、
    などが考えられる。
    中国政府としては、本プロジェクトを対外開放政策の一環として位置づけており、今後開発の重点を沿海地域から奥地へと移していく計画である。このため専門家を組織し、当該地域開発の基礎計画を起草した。
    「現代版シルクロード」を具体的に推進するにあたって、先ず沿橋の14都市を経済開発指定都市に指名し、沿海開放都市と同様の権利を与えた。また現在天然資源の開発調査を推進中である。さらに今年7月、当該地域の開発を巡り、関係各国ならびにEU、日本、アメリカ、国際機関等を招き、国際シンポジウム「中国インフラ整備会議」を開催する。本シンポジウムでの日本のイニシアティブを期待している。

質疑応答

経団連側:
「現代版シルクロード」開発計画を推進するにあたって、どのプロジェクトを優先するのか。
段局長:
具体的なプロジェクトとしては、
  1. 連雲港の開発、
  2. 中央アジアの天然ガス輸送パイプラインの建設、
  3. 鉄鉱石や稀少金属の開発、
などが考えられる。優先順位は現段階で明言することは難しい。

経団連の同計画への対応

国際協力プロジェクト部会では、今年7月、北京で開催予定の国際シンポジウムに代表団を派遣し、かねて当部会において検討を行なってきた新疆ウイグル開発プロジェクト「シルクロード21計画」を紹介する予定である。


アジアと欧州を繋ぐ新アジア欧州大陸橋(亜欧第二大陸橋・現代シルクロード鉄道)とシベリア鉄道(亜欧第一大陸橋)


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