国際産業協力委員会太平洋部会中間報告/2月10日

太平洋地域の発展とわが国の役割


近年、環太平洋諸国は目ざましい経済発展を背景に、直接投資、技術協力を通じた産業協力関係を深めている。この動きを踏まえ、昨年7月、国際産業協力委員会(委員長:伊藤正 住友商事会長)は太平洋部会(部会長:立石信雄 オムロン副会長)を設置し、この地域においてわが国はいかなる役割を果たすべきかという観点から検討を続けてきた。
以下は、同部会がとりまとめた中間報告の要旨である。


立石 信雄 部会長

1.太平洋地域の経済関係

太平洋をめぐる経済関係はプラザ合意以降緊密度を強め、貿易・投資の両面で相互依存、国際分業が進行。特に90年頃からは東アジアが著しく発展し求心力を強めるとともに、域内の貿易・投資の自由化をテコにした経済発展が実現。

2.太平洋地域の発展のための基本的認識

  1. 太平洋地域の継続的発展は、各国の国民経済への利益になると同様、日本経済にとっても長期的利益。
  2. 同地域の経済発展を促進する方策は、構成国の歴史、発展段階、宗教、文化など、社会経済の安定に影響する要因に十分に配慮することが必要。
  3. 同地域の経済発展の基本は、貿易・投資両面での自由な経済活動。政府の行う地域協力や自由化の枠組み設定などはこれを補完するもの。
  4. 日本は95年11月のAPEC閣僚会議の議長国として、太平洋地域の発展に積極的に貢献するべき。

3.貿易・投資ルールとGATT/WTO

(1) 基本的認識
多様なこの地域においてNAFTA、APECなど性質の異なる複数の枠組みが存在することは自然だが、GATT/WTOと整合的かつ相互補完的に機能することが必要。
(2) GATT/WTO
1995年1月から発足したWTOの意義を尊重し、これを十分に活用することが必要。なお、ポスト・ウルグアイ・ラウンドでの諸課題(環境問題、労働基準等)の検討が保護主義を導くものであってはならない。
(3) NAFTA
NAFTAがグローバルな貿易・投資自由化のための重要な一歩となるにはできるかぎり閉鎖性を排除していくことが条件。
(4) APEC
APECでは政府間交渉による性急な制度づくりを求めることは得策でなく、アジアの実情を十分考慮し、相互に相手の立場を尊重し理解する努力が前提。貿易・投資の自由化を進めるにあたり、域外にも無条件でMFNを供与することが原則。なお政府間合意の実施にあたって民間への強制は回避すべき。
基準・認証の国際的調和、通関手続の国際的調和や簡素化等に政府としてリーダーシップを発揮すべき。
(5) AFTA等
AFTAは、EU、NAFTAより緩い枠組み。EAECについては、今後の動向を注意深く見守ることが必要。
(6) 日米経済関係
日米両国は緊密な二国間関係を維持し、引き続き太平洋地域の経済関係の深化に寄与すべき。安定的な日米経済関係は太平洋地域の経済発展に不可欠。
(7) 中国への対応
中国は急激に市場を拡大しており、早期にWTOに加盟することが必要。各国は、WTO、APECなどの国際的枠組みで対話を進めることが大切。

4.国際通貨体制と日米のマクロ政策協調

(1) 国際通貨体制と為替の安定
貿易体制と通貨体制は世界経済の車の両輪。為替相場の乱高下は国際経済の安定的発展を阻害。相場の安定を図るためには主要国のマクロ政策の協調が重要。なお、近時のペソの混乱に示されるように、性急な制度的枠組みの導入は軋轢を生む。
(2) 円の国際化と東アジアの通貨制度
今後円を一層国際化していくことが必要。このためには、金融分野における規制緩和を行うことが必須の要件。一方、東アジア各国の多くが現在まで自国通貨をドルにリンク。
(3) 日米のマクロ政策協調
太平洋地域が将来的に安定した成長・発展を遂げることができるかどうかは、日米両国のマクロ経済運営に依拠。

5.環境・エネルギー等のグローバル・イシューへの取り組み

(1) 環境問題
域内各国・地域の官民が全力をあげて取り組むべき重要課題。わが国企業が有する環境保全に関わる技術・ノウハウを活用し、進出先にも移転することが必要。
(2) エネルギー
日本はエネルギー節約型の技術やノウハウの移転などを通じ、地域のエネルギー問題に貢献すべき。


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