中国委員会(委員長 三田勝茂氏)/2月7日

第4次円借款と今後の日中関係


昨年末合意に達した第4次対中国円借款は、環境や農業分野の重視、内陸への重視といった点への配慮に加え、5〜6年分を一括してコミットしてきた従来の供与方式を変更するなど、新たな内容となっている。そこで、日本側団長として今次円借款のとりまとめに当たった外務省の平林経済協力局長から説明を聞いた。以下はその概要である。

平林経済協力局長説明要旨

  1. 第4次対中国円借款に関しては、1993年2月ごろから検討が始まった。
    日中友好関係の観点から、また、中国の改革・開放政策が着実に進むことが日中双方のためにもアジア・太平洋地域の繁栄や安定のためにも重要であるとの認識に基づき、政府開発援助大綱を踏まえつつ、鋭意検討を行なってきた。国会や世論に厳しい雰囲気がある中で、これまでの対中円借款の伸び率やこれまでの借款の返済額を差し引いたネットの供与額等を考慮して、1996年度から98年度の3年間について、合計40案件を総額5,800 億円を目途に取り上げることとし、12月21、22日に東京で開催された政府間協議で中国側に提示したところ、中国側は直ちにこれを受け入れた。

  2. 今次円借款では、運輸、エネルギー、通信等従来から対象としてきたインフラ部門に加えて、環境、内陸、農業の重視について配慮した。
    わが国が中国に対して大量の援助を行うことに関しては、OECD開発援助委員会においても疑問視する国があるが、こうした疑問に答えるためにも、環境や農業部門の重視、さらには地域的には民間資金が期待できない内陸部に配慮し、さらに少数民族地域の案件にも配慮した。

  3. 具体的な案件の金額、内容および供与条件は今後更に調査・検討を行なった上で、毎年度の政府間協議および実施機関レベルの技術的検討を加えた上で決定する。
    調達条件に関しても毎年の協議で決定される。

  4. 今次円借款では、援助の柔軟性を確保し、より効率的、効果的な援助を実施するために、従来の長期一括供与方式を改めて前半3年分の内容を固め、後半2年分については、その後の情勢の変化を踏まえてさらに検討するという「3プラス2」方式を採用した。この「3プラス2」が終了した後は他国への円借款同様に年次協議で決定していくのが自然と考える。

  5. 円借款の供与に際して、日本側として中国側に3つのメッセージを伝えた。
    第1に、日本の協力が目に見えるようにすることである。この点は昨年1月、自分から対外貿易経済合作省の呉儀大臣に伝えた際にも、中国側としても日本の経済協力の広報に努めると約束した経緯があるが、今回も先方はこの必要性について同意した。
    第2に、日本企業の参加が重要なことである。円借款は原則としてアンタイドであるが、日本企業が円借款案件により多く参加することは日中友好に資するということを先方に伝えたところ、先方もこれに同感の意を表した。
    第3に、世銀やアジア開発銀行等各種の国際機関が中国への協力を実施しているが、日本はこれらの機関の主要出資国として、これらマルチの機関を通じても中国の発展に貢献していることを想起させたところ、先方もこれを評価した。


政府開発援助大綱

わが国の政府開発援助(ODA)に対する内外の理解増進と援助の効果的・効率的実施のために1992年6月30日の閣議で決定された大綱。この中で以下の4つの原則が掲げられている。
  1. 環境と開発を両立させる。
  2. 軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。
  3. 国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開発のために適正かつ優先的に配分すべきであるとの観点から、開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う。
  4. 開発途上国における民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。

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