中南米委員会(共同委員長 宮岡公夫氏)/2月14日

メキシコペソ危機後の中南米諸国の経済展望

− 世銀ラテンアメリカ経済セミナー


昨年末発生したペソ暴落が中南米諸国に波及することが懸念されている。世銀ラテンアメリカ、カリブ海地域担当副総裁バルキ氏他幹部一行は、世銀ラテンアメリカ経済セミナーの席で、今般の通貨危機はメキシコ独自の国内事情に起因するものであると述べ、中南米諸国全体に波及する可能性を否定した。総じて中南米諸国では政治・経済改革に向けた取組みが定着しつつあり、今後一層の成長が期待できるとの考えを表明した。以下は世銀幹部の説明の概要である。

1.ペソ危機の中南米諸国への影響

メキシコのペソ危機は同国独自の国内事情に起因するものであり、中南米経済全体に波及することはないと考える。通貨危機に対応するための国際的な制度を構築し、今回のような事態を回避するよう努めねばならない。この問題については次回のハリファクスサミット等で議論されるであろう。

2.中南米諸国の経済情勢

昨年の中南米諸国の経済は堅調に推移し、域内における94年のGDPの平均成長率は3.2%へと上昇した。95年には3.7%に達するものと予想される。また中南米諸国間の成長率の格差が縮小してきたことも注目に値する。経済成長の主因は域内貿易の拡大にあると考えている。
総じて中南米諸国は、
  1. 国内貯蓄率が増加傾向にあること、
  2. 人材育成、産業基盤の整備に向けた取組みが定着したこと、
  3. 貧困問題解決に向けた政策に着手し始めたこと、
  4. 政府の役割を見直し、民営化を推進していること、
  5. 地方自治体単位で貧困解消に向けた社会サービスに取り組み始めたこと、
などから今後の経済成長を大いに期待できる。

3.メキシコの経済情勢

サリナス前大統領の経済政策の基本路線は妥当な内容である。今回の危機は短期的危機に留まるものと楽観視している。世銀の同国に対する主な支援としては、
  1. 人材資源開発と貧困緩和に向けた支援、
  2. 金融制度の整備に向けた支援、
  3. 民営化とそれを保証する法整備の支援、
などがあげられる。世銀としてはIDB(米州開発銀行)などとの協力を強化し、こうした取組みを継続していきたい。

4.中南米諸国のインフラ整備について

中南米諸国が一層の経済発展を実現する上で、インフラ整備が要諦である。世銀ではインフラ開発への民間投融資を促す目的で、
  1. 協調融資の増大、
  2. 世銀の保証業務を活用した民間融資の動員、
  3. インフラストラクチャーファンドの創設、
  4. 将来の民間セクターの参加を促進するプロジェクトの設計、
などのアプローチで望む方針である。日本企業の参画を期待している。


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