日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾 哲氏)/2月10日

現地から見たベトナム情勢


日本ベトナム経済委員会では、一時帰国した小倉和夫駐ベトナム大使を招き、現地から見たベトナムの政治・経済情勢などについて話を聞いた。(進行:糠沢常務理事)

1.小倉大使説明要旨

1.貧しさの中でのベトナムの努力
ベトナムでの生活実感は「貧しい」ということだ。国連統計の1人当たりGNP220ドルに購買力平価を掛けると実質 400〜 500ドルとなるが、これは日本の50分の1である。この現状を克服するため、ベトナムは市場開放策を推進し、政治的孤立からの脱却を国是として懸命に努力している。

2.社会主義体制
現地にいるとベトナムはやはり社会主義国だという印象が大きい。国営企業の生産がGDPの24%を占め、何事も政府の許認可が必要な管理経済である。また、閣僚も35人と多く、縦割り組織の弊害があるため、現在首相府に権限を集中しようとしている。

3.伝統的なベトナム文化
欧米人はベトナムでのビジネスの障害は共産主義が原因だと見るが、一方でベトナムが持っている良く言えば醇風美俗、悪く言えば封建的な古い体質と現代的なビジネスのやり方との対立も一因であると思う。

4.対米関係とASEANへの加盟
先般、連絡事務所を相互開設したアメリカとの関係では、ベトナム側はアメリカの技術や資本に魅力を感じており、中国への牽制の意味からも早く進めたい考えである。
ASEANへの加盟は、南沙問題など安全保障上の問題と域内での経済の活性化という目的に加え、ASEAN加盟を旗印に国内改革をしていこうという意味がある。

5.日本への期待
ベトナムは日本に対し、お金と知識と技術を期待しているが、両国の交流インフラができておらず、互いにまだ相手をよく知らない。日本の対越投資も認可ベースで約5億ドル、在留邦人数もタイの2万人に対し、日本は 500人で、貿易の約2000億円という数字も日本全体から見れば少なく、まだ関係は薄いといえよう。

2.質疑応答

問:
ベトナム政府は、タイなど周辺諸国との経済格差が広がった背景には政治体制に問題があることを認識しているのか。

答:
原因は政治体制にもあろうが、むしろ40年にわたる戦争の影響が大きい。現在は平和な時代を迎え、アジアの市場を活用するためには戦争をしないという決意を固めており、問題は消えつつある。しかし、5〜10年先に今の政治体制のままでいけるかは疑問だ。


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