流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/2月15日

変革期にある流通各業態の取り組み


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変革に関するヒアリングを行なっている。
今回は、大手スーパー業界からダイエーの野村専務取締役、コンビニエンス・ストア業界からセブンイレブン・ジャパンの氏家取締役を招き、企業・業界としての取組みや今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

1. ダイエー野村専務取締役説明要旨

1.生活者の時代の到来
モノを作れば売れる時代が終焉し、これからは売れるモノを作る時代である。
企業は、生活者中心の発想に転換することが必要である。生活者が十分な情報に基づいて、自分で考えて行動、学習することによって、生産・供給体制も変化していく。
一方、生活者には自己責任に基づいて行動することが求められる。

2.情報の共有化
売れるモノを作るため、生活者が買いたい品物を把握し、生産・販売することが重要である。そこで、従来のように売手側が情報を発信するのではなく、流通業者とメーカーがパートナーシップを組んで、買手側が発信する情報を受信し、相互に情報を共有して、商品を生産、販売することが必要となる。
当社では、生活者から直接意見を聞くため、『お客様重役会』(各店舗毎に顧客10名に就任願い、店の幹部が売り場や商品等について直接意見を聞く) や『ライフスタイル・アドバイザー』(全国のお客様重役経験者の中から選び、商品開発等について本社で意見を聞き、提案をまとめる)等の制度を設けている。
また商品開発については、どの工場で品物を作れば安く良いものができるのか、メーカーや商社の協力も得て、世界各国から幅広い情報を集めて商品を調達している。さらに、開発商品がどの程度顧客に支持されたかを把握するため、POSによる検証を行なっている。

3.流通産業の商品開発
わが国の価格水準は欧米諸国に比べて異常に高い。昨年来の当社の新たなPB商品の発表は、内外価格差を是正するひとつの契機となったと考えている。
このため、当社では、多くの生活者のニーズを把握し、ムダを省いた商品開発を行い、大量に生産・販売することによって、コストの削減を図っている。
これは、決して商品を買いたたいて安く販売しているわけではなく、国際価格をメドに、本来その商品に見合った価格で販売することに努めているものである。その意味では「価格破壊」ではなく「価格創造」であると考えている。

4.日本の高コスト構造の見直し
わが国では、電気料金や地価が高いことから、ビールや清涼飲料水のアルミ缶を製造するにも高くつく。また、高速道路料金の相次ぐ値上げにより、物流費が嵩んでいる。このほか電話料金も高い。規制緩和や各種インフラの整備等により、わが国の高コスト体質を根本的に改善すべきである。

2.セブンイレブン・ジャパン氏家取締役説明要旨

1.コンビニエンス・ストア業界の現況
バブルが崩壊して他の業態の売上が低迷する中で、コンビニエンス・ストア業界の売上は、93年度まで2桁の伸び率を維持しており、93年度の実績は4兆 2,413億円と13年前と比べて7倍に伸びている。その中でセブンイレブンの売上高は1兆 2,819億円にのぼっている。

2.当社設立の背景
当社は、様々な経済社会の変化を背景に、お客様の長時間営業のニーズや中小小売店では限界のある品揃えのニーズ等を満たす販売形態として、中小小売商業振興法が成立した1973年に設立された。大手スーパーと中小小売商店との軋轢の中で、双方の共存共栄を図り、中小小売業者の活性化・近代化を促進するため、フランチャイズ方式を採用した。92年度の年間売上高は、飲食料品小売業の平均が 4,500万円であるのに対し、セブンイレブン加盟店の平均は2億 5,100万円と、約 5.5倍の実績をあげている。

3.フランチャイズ・システム
当社のフランチャイズ・システムは、セブンイレブン・ジャパンと加盟店が企業としての独立性を維持しつつ共同の事業として店舗運営をし、小売活動によって生じた粗利益を定率で分配する仕組みである。粗利益の分配は、単なる売上志向ではなく経営効率化が求められることから、当社の競争力の源泉となっている。
加盟店のオーナーは、分配された粗利益を基に、従業員の採用や商品の発注、店舗の清掃管理、接客等に特化し、店舗の運営管理を行う。本部は、加盟店に対する経営指導、商品開発、商品供給体制の構築、発注システムの提供や設備のメンテナンス等を行う。事業を通じて蓄積した利益は、全て拡大再生産のための再投資に向けられる。

4.社会変化に対応できる体制作り
当社は変化対応業であると認識しており、社会の変化を迅速かつ正確に捉え、変化に対応できるフレキシブルな体制作りが大きな課題である。
そのひとつが徹底した在庫の削減である。多量な商品在庫を抱えていては変化に対応できない。この20年間で1店舗あたりの在庫を 900万円から 500万円に半減させ、これに伴って売上高と粗利益率が伸びている。
また、顧客ニーズの変化に対応するためには、情報マネジメントが経営上重要である。POSを通じて顧客ニーズを仮説・検証し、社会変化を把握すべく努めている。
さらに、商品政策と物流政策を一体化して取り組んでいる。最近では、本部の物流センターと各店舗間の物流の合理化だけでなく、メーカーと物流センター間の合理化にも取り組んでいる。川上から川下に至るまでの無駄な流通在庫を減らし、経営効率化を図るため、メーカーや物流業者との間で精度の高い情報を共有し、生産・物流面でのタイアップを進めている。
社会の変化に対応できる体制を整備・充実するため、今後ますます、流通業者とメーカーとの協調連帯関係が重要となる。


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