産業技術委員会知的財産問題部会(部会長 豊永惠哉氏)/2月24日

96年春の国会で商標法が大幅改正の予定


― 手続きの簡素化、審査期間短縮が実現


企業活動のグローバル化が進展し、市場競争が激化する中で、商標を国内外で保護・活用していくことが企業経営上重要となっている。こうした中、工業所有権審議会では、国際条約への加盟等を契機に、商標法の大幅な改正を検討している。
産業技術委員会知的財産問題部会では、特許庁から商標法改正の検討状況について説明を聞き、懇談した。以下は、特許庁の河本審査第一部長・押田制度改正審議室長の説明要旨である。

1.商標法改正の必要性

現在、工業所有権審議会が、早ければ96年春の国会で商標法を改正するための検討を進めている。
(1)国際条約への対応
法改正の必要性の第1は、国際条約への対応である。昨年10月、世界知的所有権機関(WIPO)の「商標法条約」が採択された。この商標法条約は、国際的に商標に関する手続きを大幅に簡素化して調和させるものである。同条約に加盟すれば、利用者の負担は大幅に軽減されることになる。
また、商標の国際登録に関する「マドリッド・プロトコル(議定書)」も、本年前半にも発効する可能性が高まってきた。従来海外での商標登録には一国ごとの手続きが必要だったが、これに加盟すれば、WIPOの国際事務局に一度出願するだけで、複数国での登録が可能となり、国際的に事業を展開する上で大きなメリットとなる。
(2)審査期間の短縮
現在、商標出願から審査着手までには平均24カ月(登録までは28カ月)かかるが、商品のライフサイクルが短くなる中で、審査期間短縮への要請が高まっている。加えて、マドリッド・プロトコルに加盟すると、18カ月以内に審査着手することが義務づけられる。
(3)不使用商標対策
わが国の登録商標のうち約7割は使われていないとみられ、企業が商標を選択できる幅が狭まる等の弊害が指摘されている。

2.法改正の方向性

法改正の方向性としては、
  1. 商標法条約に対応して手続きの大幅な簡素化等を図る。
  2. 不使用商標を排除するために、不使用商標の取消審判制度の抜本的改善等を図る。
  3. 審査処理を促進するための制度改善を図る。

商標
自分の商品やサービスを他人のものと区別するためのマークのこと。具体的には、「パナソニック」、「SONY」、三菱の菱形マーク、ヤマト運輸の黒猫のマークなど。
途上国における偽物商品の排除など、国内のみならず海外でも自社の商標を保護することが重要となっている。それには権利の保護水準の強化と手続面の整備の双方が欠かせない。このため、GATTウルグアイ・ラウンド知的財産交渉や、WIPOの商標法条約、マドリッド・プロトコルの採択等の取組みが行われてきた。


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