なびげーたー

科学技術振興のため基本法の制定を

開発部長 池 誠


大競争の時代にはわが国の科学技術の一層の振興が不可欠であり、基本法を制定し国策としてこれを推進しようとする動きに経団連も協力すべきである
経団連ではかねてより、産業技術委員会を中心に国の科学技術予算・高等教育予算の5年間での倍増や大学・国立研究機関の教育・研究環境の抜本的な改善などを粘り強く訴えてきた。
関係者の懸命な努力もあって近年、徐々に効果が挙がってきているが、わが国の研究開発の80%を民間企業が担当するという構造は変わっていない。
その結果、基礎的研究開発の立ち遅れは依然として解決されず、さらに深刻な景気後退もあって民間企業の研究開発投資は2年続けて減少を示し、国全体の研究開発投資も昨年度から初めて減少に転じている。
さらに、若者の科学技術離れの問題も指摘されており、科学技術立国の基盤が危殆に瀕している。
しかし欧米では科学技術の強化を最優先課題の1つとして取り上げており、クリントン米国大統領は「技術は経済成長のエンジンである」という認識に基づき、経済成長と雇用を確保するため政府が科学技術政策に積極的に関与する姿勢を打ち出している。
また英国では3年前に初めて科学技術担当大臣と所管の官庁を設けた。ドイツでは産業技術重視の科学技術政策をとり始めている。EU(欧州連合)でも欧州産業の科学技術基盤を強化し、国際競争力を高めるため各種の取り組みを講じてきている。さらに、東アジアのいわゆるNIEsや中国でも同様の動きを示している。
このように、諸外国の状況を見ると、今や科学技術の振興も大競争の時代に入ろうとしているわけで、わが国としてはこれまで以上に産官学の緊密な連携を強化して科学技術の振興に注力する必要がある。
こうした認識から最近、超党派の議員立法により、科学技術基本法を制定しようとの動きが自民党を中心に進められてきている。
この基本法は科学技術の振興をわが国の最重要課題の1つとして位置づけ、国の基本計画の下に総合的・計画的に押し進めることを目的とした構想である。
この法律素案の最大のポイントは、科学技術振興に関する「基本計画」の策定を政府に義務づけ、その中に資金の確保をはじめ研究開発推進に関する総合的指針、研究施設・設備の整備、研究開発に関する情報化の促進などを盛り込むことにしている点であり、経団連のかねてからの主張の線上にある。
そこで経団連としても立法化を促進するため、近く提言を行うことにしている。


日本語のホームページへ