なびげーたー

経済団体はアジアで役に立っているか

アジア部長 藤原 勝博


アジアブームの中で、アジアとの交流は盛んであるが、同時に問題も増えてくる。経済団体の活動現場からみた課題4つとその対応について書く。
経団連にアジア部が誕生してはや2年が経つ。隣の韓国、中国から東南ア、印パ、中東からイスラエルまで、広義のアジアを対象(*)として、楽しくも、忙しい2年であった。『月刊 keidanren』4月号は「アジアの多様性と発展力」を特集している。世界のマスコミにもアジア情報、論評が溢れている。アジアブームの中で、経済団体の裏方から、4つの課題を取り上げてみたい。
第1は、貿易摩擦はアメリカだけでなく、アジアにもあり、顕在化の恐れがあること。日本の貿易黒字はアジア各国でも拡大する一方である。急増する直接投資に伴い、資本財、部品の輸出が増えるのだからとか、相手国の輸出増に貢献しているという分析的説明はできる。だが一方、現地側では、「政治的」に許容できる範囲を越えているとか、投資、技術移転を急ぎ、人材育成に協力し、裾野産業を現地に育てる手伝いをすべし、あるいは米や果物、加工食品の市場をもっと開放せよという声が高まりつつある。
第2は、円高・コスト高により日本で廃業に追い込まれつつある中小企業を、是非迎え入れたいというアジアの需要にどう対応するかである。大企業の海外投資は一巡している。中小企業は数も多いし、これからが本番であろう。双方の希望を組織的にどうリンクさせるか。経団連では、担当大臣が来て投資勧誘セミナーをしたいと言っても、今日では、既に投資をしているか、当面そこには投資しないと決定した大企業ばかりということになる。
第3は、日本・○○経済委員会という類の二国間組織の役割についてである。個別企業の専管である一般のビジネス活動と経済団体会長レベルでの政策的対話との中間に、二国間委員会の活動がある。しかし、経済の実態が激変しつつある今日のアジアで、これが期待される役割を十分に果しているだろうか。十年一日のごとく、前例主義に則った運営では誰も参加しなくなるであろう。リストラは経済団体の国際活動にも迫っている。今年はAPEC18カ国の民間経済界の会議も計画されているが、時代の要請、会員企業のニーズを満たす活動とはどんなものか。既存の場の改善、活性化と新しい場の創造を通じて、答を求めていく他はない。
第4は、日本の経済界のアジアとの交流が、欧米に比べて、質・量共にまだまだ発展途上段階であること。実際のビジネス面では相当の水準に来ているし、観光も盛んである。しかし、文化、社会、心の交流という領域では遅れている。アジア人留学生、研修生の受入れから欧米に依存、偏重する情報源、知的交流まで課題は多い。
当分、忙しい日々が続きそうである。

*中東以西は4月1日より経済協力部に移管


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