産業政策委員会政策部会(部会長 宮内義彦氏)/3月30日

円高要因の解明と対策について聞く


産業政策委員会政策部会では円高要因の解明と対策について、本田敬吉東京銀行常任参与を招いて懇談会を開催した。円高対策としては規制緩和の推進と円の国際化が有効との視点が強調された。以下は本田氏の発言概要である。

1.超円高に対する認識

現在の超円高は96年以降には是正局面に戻ると認識している。したがって、最近の円高に浮足立って生産拠点を移すのは危険である。
経常収支の黒字が円高を招くという議論は半面しか説明していない。産業部門における外貨の受取超過は外貨の売り圧力となるが、金融部門では資本の流出であり、買い圧力となる。

2.経常収支黒字の要因と円高への対応

日本の貯蓄投資バランスをみると、家計部門の貯蓄超過が法人部門と政府部門の投資を補って余りあり、これが経常収支の黒字に対応している。したがって経常黒字を圧縮するには設備投資・住宅投資を増やす必要がある。昨年の細川・クリントン会談で経常収支黒字の対GNP比2.8%の数値目標に合意できなかったことは残念だ。それによって円高に弾みがついた。
日本の輸出は対米依存度が40%と高く、アジア諸国向けも35%に及ぶ。またアジア諸国の通貨の多くがドルにリンクしているので、輸出産業はまともに円高の影響を受けている。

3.規制、商慣行等の見直し

超円高により、比較劣位の産業のみならず比較優位にあった産業でも生産拠点の海外移転が急速に進んでいる。
円高には、交易条件の改善を通じて実質所得を増加し内需を拡大するというメリットもある。そのメリットを顕在化させるために、柔軟な価格調整機能をもった経済の構築が必要であり、各種の規制や商慣行、複雑な流通機構等の見直しが求められている。

4.円の国際化

円高は海外の円不足が原因である。諸規制や慣行の見直しは円資金供給の場とパイプを広げ(円の国際化)、円不足を解消することで円相場の安定に役立つ。同時に東京市場の空洞化にも有効な防御策となろう。具体的には円建て銀行引受貿易手形(円建てBA)、短期国債(TB)市場の開放拡大、サムライ債適債基準の緩和をはじめ円建て長期債券市場の国際化等が求められている。


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