松浦駐仏大使との懇談会(司会 春名ヨーロッパ委員長)/4月3日

ヨーロッパからみた日本、アメリカ、アジア


現在の欧州は景気回復やEU拡大による経済的な期待が高まる一方で、今後の統合の方向性を見出せないでいる。こうした中でサンテール新欧州委員長や新しい各国首脳による今後の欧州の対外政策は、わが国にとっても注目されるところである。そこで、松浦晃一郎駐仏大使から、欧州の対外政策について説明を受けるとともに種々意見交換を行なった。以下は松浦大使の発言概要である。

1.欧州の対米政策

欧州の対外政策の核となる冷戦後の安全保障体制は、全欧安保協力機構(OSCE)、NATO、西欧同盟(WEU)を柱に構築されている。しかし、欧州統合の将来に関する方向性が不透明であるとともに、各国政府の政治的基盤が不安定であることもあり、今後の方向性についてコンセンサスが得られていない。対米政策においても、NATOや米軍駐留の必要性を認識しているものの明確な方針が定まっていない。さらに、経済的には農業やオーディオ・ビジュアル、情報通信分野において貿易摩擦が生じており、対米関係をさらに複雑にしている。

2.欧州の対日政策

日欧関係を貿易問題だけでなく、政治、科学技術、文化、経済援助などの幅広い協力関係とすべきであるという91年の日・EC共同宣言が基礎となって欧州の対日政策が構築されている。3月に欧州委員会は対日政策に関する報告書をとりまとめ、通常兵器の国連への登録制に関する日欧協力や最近の日欧貿易不均衡の是正傾向を評価する一方で、莫大な日本の経常黒字など成果が十分でない問題へのさらなる努力を求めている。欧州では日本の対米偏重に懸念を抱いており、米国が求める日米間の合意は結果として欧州企業に不利益をもたらすとして米国の対日交渉手法を批判している。

3.欧州の対アジア政策

欧州には成長を続ける東アジア(ASEAN、中国など)への進出に乗り遅れたという反省があり、欧州が入らないAPECの進展に強い危機感を持っている。そのため、シンガポールのゴー・チョクトン首相とフランスのバラデュール首相との会談で表明されたアジア欧州サミットなど欧州とアジアの関係強化を図る努力を行なっている。欧州では新しい市場としてアジアに期待すると同時に、アジアの労働集約的な製品が欧州市場に浸透することへの警戒感も大きい。
日米関係、日アジア関係が重要であることは認めるが、もう一つの軸足として日欧関係についても軽視することなく、着実に日・EC共同宣言で明記された公約を果たしていく必要がある。


日本語のホームページへ