第105回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/3月31日

円高の影響等により、景気の先行きは予断を許さず


景気動向専門部会では、最近の経済動向について、関係省庁ならびに日本銀行から説明を聞くとともに、産業界の業況を中心に意見交換を行った。企業の多くが急激な円高の影響を受けている上、株式市場および不動産市場の低迷等もあり、景気の先行きは、依然として予断を許さない状況にある。以下は懇談の概要である。

1.産業による跛行性が大きい

  1. 生産財、資本財の生産は、輸出好調等からまずまずの回復をみせている。一方、耐久消費財の生産は伸びが低く、非耐久消費財の生産は落ち込みが続いている。これは、輸出が伸び悩み、輸入が増加しているためである。
  2. 耐久消費財産業、非製造業産業は、従来、価格上昇を伴って伸びてきたが、今回の景気回復局面では、国際分業の進展、低価格指向を背景とする価格低下の中で、業績の回復力が弱い。これに対し、生産財、資本財産業など、従来、価格動向とは関係なく、生産性向上を中心に成長してきた産業においては、業績回復テンポは比較的順調である。全体としては、業績回復が遅れている産業の方が多いため、景気回復のテンポは緩やかなものにとどまっている。

2.急激な円高の影響は深刻

  1. 最近の急激な円高は、産業界に深刻な打撃を与えている。生産の回復テンポが緩やかであるだけに、今後、景気への影響が心配される。
  2. 輸出企業は、輸出価格の引上げ、資材・部品の海外調達の増加、生産の海外シフト等を進めているものの、急激な円高が売上、収益に与える影響は大きい。
  3. マクロモデルによる試算では、10%の円高により、実質GDP成長率は、年率0.6〜0.7%押し下げられる。
  4. 為替相場の急激な変動をもたらしている投機筋の予想をコントロールするためにも、公定歩合の引下げが望まれる。現状では、金利が低下してもインフレが生ずる懸念はない。

3.株式市場低迷が金融システムに影響

株価が依然として低迷を続けている背景には、
  1. 円高の進行、
  2. 景気の低迷、
  3. 行政改革、規制緩和の遅れ、
  4. 阪神・淡路大震災の復興ビジョンが不明確であること
等がある。株価の落ち込みは、わが国の金融システムにも大きな影響をもたらしている。

4.不動産市場も停滞

首都圏のオフィス・ビルの空室率は、依然として10%を超え、賃料も全体としては低迷している。首都圏のマンションについても、現在、1万戸近い在庫を抱えている。不動産市場においては、今世紀中は大幅な供給過剰が予想され、大変、厳しい状況が続こう。


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