第2回1%クラブシンポジウム(1%クラブ会長 若原泰之氏)/3月10日

阪神大震災 − ボランティア活動の現場から
企業と市民団体のパートナーシップを考える


1%(ワンパーセント)クラブでは、阪神大震災において市民団体の連合体「応援する市民の会」にメンバーとして参加し、被災地の復興を支援している。そこで、「阪神大震災ー被災地のボランティア活動から学ぶ企業と市民団体のパートナーシップ」というテーマのもと大阪でシンポジウムを開催(関西経済5団体が後援)し、今後の市民団体と企業の関係について話し合った。以下はシンポジウムの概要である。

問題提起
イーデス・ハンソン アムネスティ・インターナショナル日本支部長

1.企業に求められる日頃の支援

今回の震災における市民団体の活躍によって、今まで「一部の変わった人がする活動」と見られがちだったボランティア活動が、市民権を得ることができた。この傾向は好ましいが、災害救援だけでなく、日頃からさまざまな分野でボランティア活動が必要であることをもっと認識するべきである。
個人レベルでは、日頃から少しづつでも活動を続けることが大切である。そのための条件として
  1. 生活が安定していること、
  2. 自由に使える時間が持てること、
  3. 活動の意義が周囲から認められること
が考えられる。
企業には、社員がこれらの条件を満たすことができるように日頃から努力する姿勢が求められる。まず社員自らの価値観・判断力に基づいたボランティア活動を認めて支援していくことが「企業と市民団体のパートナーシップ」を構築していく前提になるのではないか。

2.異なる価値観を認め合う

近年まで、日本では企業と市民団体との接点はほとんどなく、お互いを対立的に見る傾向があったが、両者の交流が進むに連れて、良い意味で刺激を与えあっているように感じる。
「企業と市民団体のパートナーシップ」を強めていく上で必要なことは、お互いが社会の一部分として支えあっていることを認識し、「異なる価値観」を認めて付き合っていくことである。
今回の震災は、両者にとってそのような点を身につける大切な場になったのではないか。

パネルディスカッション発言要旨

1.早瀬 昇 大阪ボランティア協会事務局長

1月20日に「応援する市民の会」を立ち上げてから今まで「被災地の方々の為に何かしたい」と全国から集まってきたボランティアの受け皿となり、被災者の自立を「応援」してきた。
今回のように即座に全体像を把握することが難しい大規模な自然災害では、「公平性」を原則とする行政システムは機能しにくい。災害時には、「応援する市民の会」のようにそれぞれの自己判断に基づき目の前にある問題に柔軟に取り組むことができる民間がネットワークを組むことが有効であると考える。

2.田代正美 1%クラブ事務局次長

「応援する市民の会」の立ち上げを1%クラブとして手伝うために1月19日に被災地に入った。このように大規模な「企業と市民団体のパートナーシップ」が可能になったのは、
  1. 日頃からの付き合いで市民団体と企業が互いの論理の限界を知っていたため、
  2. それぞれの専門性や強みを活かすことの重要性を認識していたため
であると考える。
多くの企業が、拠点立ち上げのための機材と被災者の生活物資の提供および輸送、企業人ボランティアの募集など企業の強みを活かして活動に参加している。

3.筒井のり子 大阪薫英女子短期大学専任講師

「応援する市民の会」でコーディネーターをしている。具体的には、
  1. 参加者への活動の際の注意事項の説明、
  2. ボランティアの依頼受け付け、
  3. 活動メニューの作成、
  4. 活動を終えたボランティアのフォロー・アップ
などを行なっている。これらは、日頃からボランティア・コーディネーターとして訓練を受けた者でなければできない。ボランティアの現場は、このような市民団体の専門スタッフによって支えられている。

4.鈴木盈宏 トヨタ自動車総務部庶務室トヨタボランティアセンター係長

「応援する市民の会」に1カ月間事務局ボランティアとして参加した。ボランティアの現場で一番驚いたのは、企業のように業務の流れや組織図が存在しないことだった。しかし、スタッフの動きを見ているうちに、現場のルールに合わせて行動していくことが大切であることが分かってきた。
多くの「企業人ボランティア」から活動を通じて相手の立場に立って行動することの重要性を学んだと聞いた。このような社員が増えていくことが市民団体とのパートナーシップを深めていく上で極めて大切なことだと考える。

5.石井 純 松下電器産業社会文化部副参事

当社では組合と会社が協力してボランティア・センターを設置した。組合は希望者を登録し、会社はボランティアに保険を掛け、出勤扱いにしている。被災地の状況を把握し、現場のニーズに合わせてボランティアを送ることが重要であると考え、人手の足りないところに社員を送っている。
活動を通じて、現場のニーズから企業としてすべきことを見極める迅速かつ冷静な判断力が必要になることを学んだ。


「応援する市民の会」にはさまざまな支援物資が寄せられた


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