流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/3月31日

変革期にある百貨店・卸売業の取組みを聞く


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変革に関するヒアリングを行なっている。今回は、百貨店業界から三越の川瀬取締役、卸売業界から菱食の加藤副社長を招き、企業・業界としての取り組みや今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

1.三越 川瀬取締役説明要旨

1.変化に対応した三越の取組み

三越では、2年連続の営業赤字を記録していたが、95年2月期には黒字に転じる見込みである。これは、社会の新しい現象や変化に対応した以下のような取組みが効を奏したものと考える。

  1. 昨年5月の大店法の規制緩和を受けて、休業日数を年間24日に半減するとともに、営業時間を10時から20時までとした。当初、閉店時間の延長に伴い始業時間を10時30分に遅らせた店もあったが、客のニーズにあわせ、結局10時始業に戻している。
  2. 「価格破壊」に対する対応として、百貨店では価格第一主義ではなく、価値や時間、アフターケアをも重視した「クォリティー・マーケティング」を推進している。
  3. 信販会社が全国の百貨店に共通する商品券を販売したことにより、百貨店が販売している商品券の売上が激減した。また、他社クレジットカードの手数料負担がコスト上昇要因となっている。そこで各百貨店では、全国の百貨店で利用できる商品券の販売を検討し、6月10日から販売を開始する予定である。
  4. アパレル部門において、メーカー主導の供給体制から需要主導の生産・販売構造への転換を図るため、通産省主導で検討が行われてきた「QRS」(=Quick Response System)を導入している。

2.今後の百貨店の課題

今後とも、ワンストップ・ショッピングという百貨店の長所を維持していくとともに、商品価格が高いという短所を改善していく必要がある。具体的には、(1)ストア・オペレーション・コストの引き下げ、(2)在庫管理システムの整備や仕入原価の引下げを行う。三越では既に、恵比寿店において実験的にセルフサービス方式を導入し、オペレーション・コストの引下げに努めている。また、大丸と業務提携を行い「チェーン・オペレーション」を展開することにより仕入原価の引下げに努めている。
百貨店の規模については2万m2位が適当であり、今後、思い切った商品の絞り込みが必要である。

3.質疑応答

質問:
わが国の百貨店の展望はどうか。
三越:
三越の来店客数は年間約1億2000万人であり、規模を活かした経営が可能と考える。しかし年商300億円以下の百貨店については、採算があわず、今後の経営は難しいのではないか。
質問:
規制緩和について要望はないか。
三越:
物流がコスト上昇要因となっており、物流面の産業構造改革が必要である。
質問:
PB商品や製販同盟に対する取組みはどうか。
三越:
百貨店の取組みは遅れているが、ブランド品の価格の引下げに努めている。
質問:
POS導入の評価はどうか。
三越:
百貨店へのPOS導入は失敗であった。パソコン・ネットワークの展開を図る方が有効であり、その拡充を図るため、値札の統一が必要である。

2.菱食 加藤副社長説明要旨

1.卸売業の実態

菱食は、加工食品主体の食品卸売業であるが、小売業やメーカーの変化に影響を受けて、卸売業のあり方も変化している。今や卸売業は、メーカーの販売代理店としての位置づけから、小売業の購買代行として消費を起点とした考え方への転換が求められている。また、既にチェーン・オペレーションを全国展開し「組織小売業」と呼ばれている大型小売店に見倣い、「組織卸売業」を展開していく必要がある。菱食では従来より卸売業のグループ活動に取り組んでいる。さらに、卸売業は依然として業種別卸が主流であるが、今後「卸の集約化」により効率化を推進する必要がある。これらの過程では情報化推進が求められる。

2.商品価格の低下への対応

菱食のデータによると、昨年のケース当たり単価は7.44%低下しており、価格は確実に下がる傾向にある。卸売業は収益性が非常に低いため、今後、ローコスト・オペレーションの構築が重要となる。
菱食では、物流経費が経費の45%と最大の経費項目となっており、物流コストをいかに削減するかが大きな課題である。
近年、小口・多頻度配送が一般化しており、その合理化が課題となっていた。そこで、菱食は、提携先であるアメリカのフレミング社のノウハウを食品分野に導入し、わが国の卸売業界で唯一、小口配送を統括するRDC(広域対象型のリージョナル物流センター)を設置した。RDCでは機械化やパートの活用など徹底的な合理化を行なった結果、FDC(既存の配送センター)の業務も効率化される等、物流の効率化やサービスの向上に役立っている。

3.今後の課題

メーカーの建値制度廃止が問題となっている中で、内部管理体制の整備を一層進めていく必要がある。またカテゴリーマネジメント、プライシングモデルの使用等により小売業支援の強化が必要である。

4.質疑応答

質問:
日本の卸売業は多段階と聞くが、食品流通分野の実態はどうか。
菱食:
2次卸、3次卸まであり、まだまだ流通構造は多段階である。しかし小売業への直接販売比率は高まっており、菱食では昨年ようやく50%を越えた。中小卸売業は多数存在しており、中小小売業への販売が行われているのが実態である。
質問:
物流の効率化への取り組みはどうか。
菱食:
業種別卸が主流であり、共同物流は一部で行われているに過ぎない。電気機器の共同配送に係る物流ガイドラインのようなものは食品分野ではまだできていない。帰り荷の問題も今後検討する必要がある。


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