訪ASEAN(第2次)ミッション勉強会・結団式

訪ASEAN(第2次)経団連ミッションに向け、外務・通産省、訪問国大使と懇談


経団連では、アジア太平洋地域のさらなる発展を担う重要な国々であり、近年わが国との結びつきを深めているASEAN諸国とベトナムに、豊田会長を団長として副会長、関係委員長からなるミッションを2月15〜26日と4月10〜19日、6月4〜7日の3回に分けて派遣し、各国の政府、経済界首脳との間で大所高所の政策対話を行うこととしている。
第2次ミッション派遣を前に、外務省の藤崎アジア局参事官(3月17日)、通産省の細川通商政策局長(3月31日)、今回訪問するフィリピン、マレーシア、インドネシアの各駐日大使(4月5日)と意見交換を行なった。

1.藤崎参事官説明要旨

  1. 92年6月のラモス政権誕生以降、フィリピンは治安の回復、経済の建て直しに努め、一定の成果を挙げている。経済成長率は91年の0.3 %から94年には5.5 %に伸びた。外交面では従来の対米一辺倒からアジア重視へと転換が見られ、一時米比関係が冷却化した時期もあったが、その後関係回復が図られた。ラモス政権は、スービック米軍基地跡を自由港、金融・商工業のセンターとして発展させたいという強い意向を持っており、同基地跡の開発を国家の優先事項として法制化もしている。

  2. マレーシア経済は極めて良好で、94年のGDP成長率は8.5 %であった。2020年までに全ての面で先進国になることを目指している。外交政策ではASEAN協力の強化、イスラム諸国、非同盟および自由主義諸国との協力が基本であり、APECについてはASEANの弱体化を招かないよう慎重に進める必要があるとの立場をとっている。95年12月に下院の任期が切れるため、本年中に選挙が行われるだろう(注:4月6日、下院を解散)が、マハティール首相の権力基盤は安定している。

  3. インドネシアのスハルト大統領は現在73歳で、98年の大統領選挙に向けてポスト・スハルトが取り沙汰されている。現在、トリ・ストリスノ副大統領とハビビ研究・技術担当国務大臣が有力後継候補と目されている。インドネシア経済は良好で、94年に外国投資に関する大幅な規制緩和を行い、100%外資の原則承認、外資比率90%への拡大、資本の現地化規則の廃止等が実現した。昨年、インドネシアはAPECの議長国としてスハルト大統領のイニシアチブの下、域内の貿易投資の自由化推進に積極的に取り組んだ。ただし、ボゴール宣言には自由化の具体的内容は盛り込まれていない。

  4. アジアと欧州との間に対話のチャンネルを設けようと、シンガポールのゴー・チョクトン首相がアジア・欧州サミットの開催を提唱している。日本に対してはまだ説明も正式な参加要請もなされておらず、ASEANの出方を待ちたい。

2.細川局長説明要旨

  1. アジアの経済発展の特徴は輸出に依存していることである。域内の相互依存関係も進化しており、APEC域内貿易は7割近くになる。
    フィリピンの課題は
    1. インフラ整備(通信、運輸、エネルギー)、
    2. 人材育成、
    3. 外資導入
    である。2000年までに新興工業国入りする目標を掲げており、そのために自由化を進めている。マレーシアは、
    1. 先進国からの技術移転の促進、
    2. 技術者・熟練労働者不足、賃金上昇、
    3. 産業構造の高度化、
    4. 環境問題
    等の問題を抱えており、2020年に先進国に仲間入りすることを目指して中小企業育成に熱心に取り組んでいる。また、インドネシアの課題は、
    1. 非石油部門の振興・輸出産業の育成、
    2. 地域格差是正、
    3. インフラ整備、
    4. 外資導入
    である。

  2. 30日、不公正貿易白書を発表した。ASEAN諸国の貿易政策にはこの1年、さほど改悪はなく、総じて自由化の方向に向かっている。

  3. APECは11月16、17日に閣僚会議、19日に首脳会議を大阪で開催する。18日に民間の会議を企画してほしいと考えており、経団連の協力を得たい。

3. シアソン駐日フィリピン大使説明要旨

フィリピンの政治経済は、ラモス大統領の強力なリーダーシップにより安定と成長に向かっている。外資導入による経済発展を目指しており、投資環境を整えるためインフラ(電力、運輸、通信)整備や自由化などさまざまな改革を行なっている。フィリピンは、それ自体大きなマーケットであるとともにAFTAにより3億5千万のASEANマーケットにもアクセスできる。識字率も高く英語を話す労働力が豊富にある。日本企業の投資を期待する。

4.カティブ駐日マレーシア大使説明要旨

昨年、日本の対マレーシア投資は台湾に抜かれて2位となった。マレーシアでは賃金が高騰し、もはや労働集約型産業の競争力は失われた。今後は資本集約型のハイテク産業を受け入れる準備を整え、この分野での競争力を高めていきたい。また、対日貿易赤字に悩むマレーシアとしては、日本市場の一層の開放を求めたい。APECについては、加盟国の目標は共通であるものの目標到達までのアプローチは異なると考える。大阪会議の結論が加盟国の総意となるよう、準備段階では民主的で透明なやり方をとってほしい。なお、EAECを提案しているからといってマレーシアのAPECに対する態度を疑わないでほしい。マレーシアはAPECを支持しており、EAECはAPECを補完・強化するものである。

5.ラフマット駐日インドネシア公使説明要旨

この7年、非石油部門の輸出は毎年20%の割合で伸びてきた。これを牽引力として成長を持続させたい。日イ関係は良好であり、日本はインドネシアにとって最大の投資国である。インドネシアで事業を展開している日本企業は多いが、サポーティング・インダストリーの進出はあまり多くない。合弁などを通じたサポーティング・インダストリーのインドネシア移転を希望する。


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