なびげーたー

求む!途上国の国造りアドバイザー

経済協力部長 市川 博也


日本の産業発展の経験を途上国に移転する「経団連国際貢献シニア・アドバイザー構想」。経験豊かな企業人にしかできない経団連版国際ボランティア活動を国連、世銀等と推進する。

昨年末の経団連の政策提言「冷戦後のわが国の国際貢献と経済協力の役割」は世銀、国連、各国の援助機関、並びに20カ国を越える在京大使館からコメントをいただく程、国際的に経団連の考え方を高く評価してもらう契機となった。実は、この提言の中で仮称「実年協力隊構想」として、登場したものが「経団連国際貢献シニア・アドバイザー制度 (仮称) 構想」としてここで紹介するものである。
この構想は、米倉経済協力委員長の大号令の下に、すでに南アフリカ、ベトナムの国造り支援の為の日本の企業人派遣構想を国連開発計画(UNDP)と検討しはじめたことに端を発する。世銀もこうした途上国の指導者にアドバイスを提供できる日本の企業人を求めており、現在、経済協力委員会に新たな部会を設置して本格的な検討をする準備を急いでいる。実務レベルでは、先般、アメリカ、イギリス、国際機関を訪れ、民間企業人の途上国への派遣制度の概況を調査したところである。
豊田経団連のキーワードは「変革、創造、信頼の醸成」であるが、これは、「経団連国際貢献シニア・アドバイザー制度」創設の意義づけに重ね合わせられる。日本が国際社会で尊敬され、名誉ある地位を得る為の経団連の新たな国際活動として、企業トップを含めた日本の企業人が、直接途上国の指導者層に企業活動を通じた国造りのアドバイスをしていく仕組みを検討しようというものである。
軍事を抑え、民生分野での経済開発を何よりも大切にしてきた日本の経験―特に企業人の経験は、冷戦後の開放化、民主化、民営化の波に立ち向かわねばならぬ途上国の指導者にとっては、敬意と関心の的になっている。企業活動を通じて、国民生活の向上をもたらすことへの信奉は、経団連の指導者が途上国に伝えてよい宣教活動でもある。ヒト、モノ、カネ、情報のグローバルな移動は、経団連の国際活動にも大きな変革を迫っている。今世紀末には日本製造業の海外生産比率が2割を越すと言われる。国際社会と呼吸をひとつにした経団連の新たな国際活動を模索検討せねばならない。政治や軍事力だけでは、途上国の紛争は解決しない。ベルリンの壁を崩壊せしめたのは、国境を越えた経済活動であった。冷戦の終焉により安全保障の環境は大きく変わり、軍事やPKO以上に経済発展を通じた民生の安定や秩序の形成が重要と認識されている時代である。軍事小国、経済大国の日本の国際的役割は、この意味で極めて大きい。
豊田会長が経団連ベネズエラ委員長を務めておられた頃、キッシンジャー氏等とともにペレス大統領の特別アドバイザーとして活躍された例がある。ご参考まで。


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