第6回評議員懇談会(進行 齋藤裕評議員会議長)/4月6日

これからの経済社会のあり方、人材育成、景気をめぐり評議員と意見交換


経団連では、評議員の意見を日々の活動に反映させるとの観点から、評議員懇談会を開催し、分科会方式で、当面の重要課題について意見交換を行なっている。
4月6日の第6回評議員懇談会では、経団連が重点的に取り組んでいる3つのテーマ、「わが国経済社会の基本構想」「創造性ある人材の育成」「景気の動向と対策」について意見交換を行なった。評議員から出された意見の概要は以下の通りである。

  1. わが国経済社会の基本構想
  2. (第1分科会 司会:齋藤 裕 議長)


    齋藤議長

    1.現状認識

    世界の冷戦構造が終結するとともに、日本も転換期を迎えている。明治以来、経済成長を達成することが国民のコンセンサスであったが、これが大きく変わり、多元的な価値観の社会となったことを前提としなければならない。
    また、経済が失速する一方で、情報化、技術革新が急速に進んでいる。

    2.21世紀の経済社会の姿

    1. 経済成長の追求と生活・文化との調和・バランスを考えるべきである。
    2. もはや一国経済主義、一国平和主義は成り立たない。国際社会との調和を配慮し、その中で日本のビジョンを考えるべきである。
    3. 追いつけ追い越せの後の国家像を示さないと解決策は出てこない。
    4. 市場原理に取り込めない環境や資源の問題にどう取り組むか。
    5. 世界人口の急増は必至であり、その際、難民、外国人労働者の問題が必ず起こる。

    3.対応策

    1. 国際化に対応するためにも規制緩和、自己責任原則の確立が必要である。ただし、規制緩和の先に、一体どういう社会を作るのか。それが明確でないと大胆な規制緩和は行われない。
    2. 産業の再編を促すため、独禁法を改正して持株会社を解禁すべきだ。その際、連結納税も可能にする必要がある。
    3. 変化を恐れない企業人の気概が求められる。激しい変化の中で企業組織も抜本的に見直すべきである。
    4. 高齢化社会に備え、年金制度の抜本改革が必要である。
    5. 災害対策の観点から国土の見直しが必要である。首都機能の分散、平成ニューディールも検討すべきである。
    6. 土地問題が最大の課題である。公共目的のためには私権を制限すべきである。
    7. 地方分権を促進し、同時に地方の財源を確保すべきである。また道州制の導入も検討すべきである。

  3. 創造性ある人材の育成
  4. (第2分科会 司会:山本 卓眞 副議長)


    山本副議長

    1.創造性の意義

    1. 個性的で人と同じことをやらない位の人間が必要である。
    2. 必要なのは、創造性ではなく、新しいことに勇敢に取り組む姿勢である。
    3. 求められるのは、基礎能力や常識を伴った創造性である。
    4. 創造性だけでなく、道徳・環境教育も重要である。
    5. 創造性のある人材ばかりでは良くないが、一定のパーセンテージは、そういった人材が必要である。

    2.教育システムの課題

    1. 創造性を育てるためには、初等・中等教育が重要であるが、現在の学校では、創造性を高める教育が行われていない。
    2. 就学者は今後減っていくが、学校を減らすのではなく、1学級の人数を減らして先生の目が行き届くようにすべきである。
    3. 父親が仕事に忙殺され、子供の教育を母親に任せすぎていることが問題である。
    4. 創造性を育てていくためには、いろいろな文化に接することが必要である。

    3.企業の果たすべき役割

    1. 企業内において、創造的な人材が育つ環境を整えることを考えるべきである。
    2. 個人の成果や創造性を正しく評価すべきであり、そのための評価基準が必要である。
    3. 才能があっても、良い学校に入れない人に奨学金を出したり、良い教育を行なっている先生を応援してみてはどうか。
    4. 企業の欲しい人材、大学の教育方針などについて、大学と企業が忌憚なく意見交換をすべきである。

  5. 景気の動向と対策
  6. (第3分科会 司会:羽倉 信也 副議長)


    羽倉副議長

    1.円高の影響

    1. 来年以降、米 国など海外の市況が悪化することが予想され、1ドル=85円のままでは、輸出企業は立ち行かなくなる。今のうちに、為替安定のための抜本的な対策が必要である。
    2. 企業は急激かつ大幅な円高にとまどっており、最善の努力をしているが、限界にきている。

    2.円高対策

    1. 円高是正、為替安定は、小手先の対応では実現できない。キーカントリーたるアメリカの本腰を入れた取組みが不可欠である。
    2. 政府は、内需拡大、規制緩和を断行するとともに、為替安定のための国際協調を各国に強く働きかけるべきである。この点で、公定歩合の引下げは、日本の意思を明確に示すことになる。
    3. 中長期的には、為替安定のための抜本的対策(例えば、ターゲットゾーン、安定相場圏の設定)を考えていくべきである。

    3.資産デフレ対策

    株価の大幅な下落など資産デフレに対して、わが国政府は的確な対策を打ち出すべきである。


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