中南米委員会(共同委員長 宮岡公夫氏)/4月11日

ボリビア共和国の資本化政策について


中南米委員会では、ボリビア共和国のレボヨ資本化政策担当大臣と世銀のゴールドマーク資本化政策担当部長を招き、同国の資本化政策について説明を聞いた。両氏は「資本化政策は伝統的な民営化とは異なり、国民年金システムの改革という社会政策を伴う過去に例を見ない革新的な政策である。日本企業の皆様には、ぜひとも戦略的なパートナーとして投資への参加をお願いしたい。」と強調するなど、わが国企業の資本化政策への関心を強く求めた。

  1. レボヨ資本化政策担当大臣の講演要旨

  2. レボヨ大臣

    1.ボリビア経済の概要

    GDPは1987年以来、平均 3.7%の伸び率を示し、94年も4.3%と拡大基調にある。インフレ率は、10年前に23,000%を超えていたものが、85年の新経済政策によりハイパーインフレーションも収束し、93年 9.3%、94年 8.5%と中南米で最も低く安定している。財政赤字も政府の予算管理強化により、93年から94年にかけ半減している。
    一方、85年の対ドルおよび他の主要通貨に対する為替の自由化後、通貨は一貫して安定している。また、輸出の堅調な伸びにより対外収支は改善され、外貨準備高は93年1億3200万ドル、94年は3倍の4億1000万ドルへと増加した。このように、同国のマクロ経済は極めて安定しており、マクロ経済政策は中南米の中で最も顕著な成果を挙げている。

    2.資本化政策の必要性

    他国に例を見ない独特の民営化プログラムであり、経済の近代化、高成長率の維持、貧困者の所得増ならびに雇用の創出等を目標としている。政府による非効率な国営企業の運営がこのまま続くならば、国内の貯蓄率はさらに低下するとともに、構造的失業、不完全雇用の状態は解消されない恐れがある。
    資本化は6つの国営企業(国営電力会社、国営電気通信会社、国営航空会社、鉱山公社、石油公社、国営鉄道会社) を対象としている。これら企業群でGDPの65%を占めているが、今後、民間資本の導入、新しい技術・ノウハウの提供により、より効率的で国際競争力のもった企業への転換が可能となる。なお、資本化にあたり自由で公正な競争を促進するために対象分野の法改革を実施するとともに、各分野にそれぞれの資本化プロセスを監視、支援する投資銀行等、アドバイザーを設置する。

    3.資本化政策の2つの特徴

    第1の特徴は、「資本の投入」の概念についてである。政府は戦略的投資家を募り、選考・審査の上、参加企業を決定し、国営企業の時価に相当する資本を投入させる。この資金は通常の民営化の場合のように国庫に入るのではなく、企業の再投資に向けられる。当該投資家は株の50%のみを所有するが、100%の経営権を把握できる。
    第2の特徴は、この資本化が年金システムの改革を伴うものであるという点である。民間資本に売却した株式の残りの50%を18歳以上の全国民に無償で割譲し、国民はこれをAFPとよばれる年金基金管理機関にその管理を委託する。年金基金は海外の証券市場において株を上場し、流通を図る。株式から得る利益は、国民が定年(60歳位を予定)に達した時に年金として受け取ることになる。

  3. ゴールドマーク世銀資本化政策担当部長説明要旨

  4. ゴールドマーク部長

    1.資本化政策に関わる世銀の支援

    このプログラムは、東独の民営化ならびに東欧、ロシアにおけるクーポンを使用した民営化を組み合わせたものであり、貧者に対する所得増、持続可能な経済成長を達成することを大きな目的としている。
    世銀は、この資本化プログラムが、
    1. ボリビアのためになること、
    2. 世銀のグローバルイニシアティブを発揮する絶好の機会であること、
    3. 他の地域でも再現される可能性があること
    を理由として支援してきた。具体的には、年金改革等のため向こう2〜3年間かなりの負担が生じることを踏まえ、米州開銀との協調でボリビアの調整オペレーション支援のため1億2千万ドルを融資する予定である。加えて、国際的な投資銀行、弁護士、専門家を手当てするため技術援助として6000万ドルを融資する。

    2.資本化政策の当面の課題

    1. 資本化することで、将来は税収増、雇用の創出が期待されるものの、当面、政府は現時点での収入を放棄しなければならない。95年のGDPはマイナス 4.4%、税収の損失もあり、財政赤字は過去最大となるであろう。
    2. 現在のボリビアの国内資本市場は非常に小さく未発達なので、当面はロンドン、ルクセンブルク、ニューヨークなどで株式を上場し株の流動性を図っていかざるをえない。
      しかし、将来的には資本化プログラムによる年金基金の改革とともに国内の金融セクターを整備し、国際競争力のある資本市場の確立を目指す。


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