OECD諮問委員会(委員長 行天豊雄氏)/4月6日

OECDが多国間投資協定への取組みを開始


5月のOECD閣僚理事会の準備や加盟国の経済状況について、官民の関係者と意見交換するため来日したペイユOECD事務総長を招き、懇談会を開催した。席上、ペイユ氏は、経済・労働・社会状況、多国間投資協定(MIA)などの多国間システムの強化、OECDと非加盟国との関係の3点が、5月の閣僚理事会の主要テーマになると説明した。以下はペイユ事務総長の説明の概要である。

5月のOECD閣僚会議の主要テーマは、以下の3点である。

1.経済・労働・社会状況

OECD加盟国の経済は、ここ2年、回復基調にある。しかし金融市場の動向は、かつてないほどに不安定で予測困難になっている。また経済回復にもかかわらず、雇用は伸びていない。これが投資やリスク負担の意欲を妨げたり、保護主義的な政策への支持を高めたりしている。
こうした中で、各国とも人口高齢化、社会保障制度の不備、都市犯罪、移民問題、所得格差の拡大など、新たな社会問題への対策が必要となっている。

2.多国間システムの強化

ポスト・ウルグアイ・ラウンドの課題として、各国の環境、競争政策、労働基準、税制ならびに投資制度が貿易に及ぼす影響の問題がある。OECDは、これらの問題に積極的に取り組んでいる。
このうち投資については、5月の閣僚理事会で加盟国の付託をとりつけ、MIA交渉を開始する手筈となっている。国際間の投資協定の確立については、途上国とOECD諸国とで利害が対立するため、はじめからWTOで議論すると政治問題化することが懸念される。そこでOECDで検討を進め最小限のコンセンサスを得た上で、最終的にWTOレベルの普遍的な協定に向けて交渉することが望ましい。当面OECDでは、現状で望みうる最善の協定を目指し、投資の自由化、投資保護、紛争処理を中心に検討していく。また同時に、非加盟国との話し合いも進めることにしている。MIA交渉では、各国に留保を認めた上で拘束力を持たせ、留保を定期的に審査し漸次撤廃していくという方法を考えている。

3.非加盟国との関係

現在、韓国との間で加盟交渉中であり、96年末には加盟が実現しよう。近く中国、インド、インドネシアとも加盟交渉を始める。中国には今年、ハイレベル・ミッションを派遣する。
なお、最貧国への支援問題は、先進国の間で近年、当該国の自助努力を重視する傾向があり、OECD内のプライオリティは下がりつつある。


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