統計制度委員会(司会 宮下委員長)/4月13日

急激な円高など先行き不透明感が強まるなか、今後の景気指標を注視する必要


統計制度委員会では、経済統計からみた最近の経済情勢ならびに今後の政策運営のあり方について、竹島日本銀行調査統計局長から説明を聞くとともに、意見交換を行なった。
席上、竹島局長から「急激な円高、株式市場の不振など、先行き不透明感が強まっており、景気は微妙な局面にあることから、今後の経済動向に細心の注意を払い、機動的な対策を行う必要がある」との認識が示された。以下は竹島調査統計局長の説明要旨である。

  1. 最近の経済情勢について
  2. (1) 景気の先行き不透明感が強まる
    1. 景気が緩やかな回復過程にある背景には、第1に過剰設備や耐久消費財のストック調整の進展、第2にアジアなど海外需要の拡大による輸出増加、さらに数次にわたる補正予算、低金利政策など財政金融政策が景気を下支えたことがある。

    2. しかし、景気の回復力は従来と比べて極めて弱い。景気の底から4四半期までの実質GDPの平均伸び率は、過去の回復局面では4.8%であるのに対し、今回は1%と動きが鈍い。設備投資も、大企業の製造業の中で、比較的好調な業種が設備投資を伸ばしているが、非製造業では依然として低迷しており、従来の回復パターンと異なる。その背景には、資産デフレに加え、アジア諸国からの安値輸入品の流入が、非製造業の収益を圧迫していることがある。

    (2) 今後は、急激な円高、阪神・淡路大震災ならびに価格破壊の影響を注視する必要
    1. 工業化が進んだ東アジア諸国との競争激化や価格破壊などによる構造調整の圧力は、輸入品との競合が激しい消費財産業、規制に守られた非効率な産業を中心に、今後も成長制約要因として働くと思われる。

    2. 阪神・淡路大震災に伴う消費自粛ムードは少しずつ収まりつつあり、今後は住宅投資などの復興需要が景気にプラスに働く。
      ただし巨額のストックの損壊が、家計や企業のマインドに悪影響を与える惧れがある。

    3. 急激な円高が、構造調整の圧力にどの程度拍車をかけるかという点にも注意を要する。円相場が1ドル=80円付近で定着し、海外景気も減速する場合には、生産の海外シフト、輸入の一層の増加などにより、国内生産が圧迫され、企業収益は悪化する。その結果、企業の投資行動が慎重になることから、景気は失速する惧れもある。

  3. 懇談
    − 最近の経済情勢などについて −
  4. 経団連:
    円高が、わが国経済に与える影響は、輸出面よりも輸入面の方が大きいとの見方があるが、どのように考えるか。
    日銀:
    円高の影響が輸出企業に集中している点が問題である。円高メリットをうまく還元できるよう対策を講じる必要がある。
    経団連:
    価格破壊の過程で、個人消費の停滞が生じているのではないか。
    日銀:
    価格破壊は、流通部門において個人経営者の転廃業が進んでいることからも、消費行動に悪影響を与えている可能性がある。


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