訪ASEAN(第2次)ミッション(団長 豊田会長)/4月10日〜19日

フィリピン、マレーシア、インドネシアの政府首脳および民間経済人と懇談


経団連では、本年2月のシンガポール、タイ、ベトナムへの第1次ミッションに引き続き、ASEANの残りの3カ国を訪問し、各国の政府・経済界首脳との間で、2国間、多国間の諸問題について政策対話を行なった(団長:豊田会長、団員:諸橋日比経済委員会代表世話人、川勝、歌田、鈴木、関本、那須、末松、青井、伊藤の各副会長、熊谷日本・インドネシア経済委員長、三好事務総長)

1.全体の印象

  1. 訪問した3カ国は、経済の発展段階は異なるものの、各国ともさらなる経済発展に向けて官民をあげた努力を続けており(従来ASEANの中にあって経済が低迷していたフィリピンも昨年より高成長に向かい始めている)、日本を含むアジア太平洋地域内での相互依存度も一段と高まっている。
    各国政府は、成長の原動力が民間にあることをよく認識しており、規制緩和、自由化政策を着実に推進することで外国の資本や技術を導入し、一層の経済発展を図っている。その受け皿としてのインフラ整備にも重点が置かれている。

  2. こうした状況下で行われた3カ国での政策対話で、話題に上ったテーマは以下の3点であった。
    第1は、各国とも民間投資の役割を重視しており、(1)サポーティング・インダストリー、部品産業等の中小企業、(2)インフラ関連部門、(3)技術移転、人材育成に資する分野への日本の投資を要望している。
    第2は、円高問題である。各国、特にインドネシアは高い関心を抱いていた。円建て債務の増加、日本からの輸入価格の上昇等の面で各国は苦慮している。円高は日本のみならず、アジア諸国に大きなインパクトをもたらすものであり、単に日米間の問題ではない。円・ドルを安定させるグローバルな共同作業が必要との指摘もあった。
    第3に、各国ともAPEC大阪会議に対して大きな期待を抱いており、経団連ほかが主宰する「APECビジネス・コングレス:APB-Net II」(10月22〜23日、於 大阪)への賛意を3カ国で得られた。

2.フィリピン

  1. フィリピンでは、ラモス大統領、ナヴァロ貿易工業長官、オカンポ財務長官、ハビト国家経済開発庁長官兼社会経済計画庁長官、パドリナ科学技術長官代行と会見したほか、ユチェンコ氏をはじめマカティ・ビジネス・クラブ幹部と懇談した。また、アジア開発銀行の佐藤総裁とも意見を交換した。

  2. ラモス大統領は、APECにおける中小企業技術移転・訓練センターの構想への日本の官民の協力を要請した。
    銀行、保険、船舶、海運等の分野においても規制緩和を進めているとのことであり、日本からの投資促進を要望された。また、全国15の州にテクノ・パーク、特別経済地域、輸出加工区等を設けており、投資誘致をサポートしているとのことであった。

  3. 閣僚、経済界との懇談会では、フィリピン経済のアキレス腱であった電力事情の好転や経常収支の黒字転換等、明るい要因が指摘され、今年度も引き続きフィリピン経済は高成長を達成するとの見通しが示された。電力部門を中心とするインフラ関連やエレクトロニクスをはじめ、さまざまな産業分野への日本の投資が求められた。

3.マレーシア

  1. マレーシアでは、当初マハティール首相ならびにラフィダ通産大臣とも会見する予定であったが、下院が解散し、総選挙に向けた選挙準備が始まったため、急遽会談がキャンセルとなった。タン・スリ・アズミ会頭をはじめとするマレーシア全国商工会議所のメンバーと会談した。また、マハティール首相が開発に力を入れているランカウィ島を訪問し、その潜在性を探った。

  2. マレーシア全国商工会議所との懇談では、マレーシア側より、日本からの技術移転のスピードが遅いとの指摘があったが、日本側より具体的な事例をあげて技術移転の現状や技術移転に関する基本的な考え方を説明し、実りのある意見交換が行えた。
    さらに、EAECに対する日本の積極的な支援と国際社会における日本のリーダーシップの発揮を強く要請され、APECやAFTA(ASEAN自由貿易地域)との関係も考慮しつつ、活発な議論が展開された。

4.インドネシア

  1. インドネシアでは、スハルト大統領、トリ・ストリスノ副大統領、ハビビ研究・技術担当国務大臣、サレ・アフィフ調整大臣、アリウィボウォ工業大臣、サンヨト投資担当国務大臣兼投資調整庁長官、マリ・ムハマッド大蔵大臣、ジワンドノ中央銀行総裁や、アブリザル・バクリー会頭をはじめとするKADIN(インドネシア商工会議所連合)ほかの経済人と会談した。

  2. スハルト大統領からは、大企業だけではなく、日本の中小企業にも是非インドネシアに進出してほしいと要請された。日本の民間投資を誘致したい分野として、(1)電力、(2)合板、(3)紙・パルプ、(4)食品加工業、(5)セメント、(6)海洋資源があげられた。
    円高について大統領は、折角インドネシア経済が順調に発展しているのに、債務が膨らむのは好ましくない。このまま円高が進行すれば、債務が返済できなくなるのではないかとの懸念を表明したが、同時に円高にはプラスの面もあり、日本向けの輸出拡大の好機となるとの発言があった。いずれにせよ、円高問題に日本はしっかり対応してほしいと要望された。

  3. 閣僚、経済界首脳との懇談では、円高問題のほか、サポーティング・インダストリーの育成、技術移転、インフラ整備等の面での日本とインドネシアの協力が話題に上った。外資に対する規制緩和にいかにインドネシアが積極的に取り組んでいるかを力説したうえで、日本からの投資促進を要望する声が強かった。APECを通ずる域内協力についても活発に意見交換を行なった。


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