第3回日本ベトナム合同経済会議 /4月19日〜20日

ベトナムの投資環境改善と人材育成をめぐって


日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾哲氏)では、ベトナムのドー・ムオイ共産党書記長の来日に合わせて、第3回日本ベトナム合同経済会議を開催した。合同経済会議を日本で開催するのは初めてであり、ベトナム側からドー・クォック・サム国家計画委員会委員長をはじめ33名の経済人と関係機関の幹部が出席した。日本側からは約170名が参加し、ベトナムにおける投資環境の改善や人材育成問題等をテーマに意見交換を行なった。


ドー・ムオイ書記長

1.投資環境改善に関する経団連の要望

ベトナムは1986年12月の第6回共産党大会で経済の改革開放を目指すドイモイ(刷新)政策を採択し、国を挙げて計画経済から市場経済への移行に取り組んでいる。その結果、農業部門の生産増加を背景に実質GDP成長率は92年以降3年連続で8%台の高い成長を記録するなど、本格的な経済的離陸に向けて力強く始動しはじめた。
市場経済化を推進しているベトナムに対して、経団連は今年2月、豊田会長を団長とするミッションを派遣した。ドー・ムオイ書記長、ヴォー・ヴァン・キェット首相など党や政府首脳との懇談において、経団連からはベトナムの投資環境改善を求める9項目の提言「日越経済交流のさらなる発展に向けた経団連の要望」を提示し、ベトナム側の早急な対応を求めた。
これに対してベトナム側からは、ドー・ムオイ書記長の訪日時に開催を予定している合同経済会議において、経団連の要望に関し回答を行うことを約した。合同経済会議では、フック国家計画委員会副委員長から以下のような回答があった。

2.経団連要望に対するベトナム側の回答

  1. ベトナムへの投資を進めるにあたり、行政上の手続きが複雑で、審査に時間がかかり過ぎるとかねて指摘されてきた。これに対してベトナム政府は94年12月、海外からの直接投資案件の審査・許可に関する政府決議を発表し、審査に関与する省庁の範囲を大幅に縮小するとともに、中央省庁と地方官庁の責任の所在を明確にした。今後とも引き続き外国投資に関する行政手続きの改善、行政官の資質向上を図り、ドイモイ政策に対する内外投資家の信頼を高めたい。
    投資の認可とは別にロイヤリティーが審査され、しかもその審査もASEAN諸国の水準より厳しいことについては、今後、各国の動向とベトナムでの経験の蓄積を勘案しながら現行の制度を再検討したい。

  2. ハノイ、ホーチミンでの土地使用料が近隣諸国に比べ2〜3倍高いとの指摘については、94年12月、土地使用料に関する新規定を発表し、従来よりも25%引き下げた。法外な立ち退き料の請求がないよう、規定の遵守をベトナム側の責任者に対して呼び掛けている。

  3. 通貨の交換性については、国家計画委員会、中央銀行、大蔵省、国家協力投資委員会の関係者が集まり検討しているが、各企業の具体的な需要に基づき外貨の交換ができるようにすることが重要だと考えている。

  4. 外国人が安心してベトナムで仕事ができるよう病院や住宅などの生活インフラを整備し、ホテルや事務所ビルの建設に努めている。日本人学校の開設についても、他国と同じ条件の下で、関係機関で鋭意検討しているところである。

  5. 多くの外国投資家は、合弁事業における重要事項決議の全会一致規定を問題視しているが、合弁事業内部での意見の統一は重要なことだと考える。合弁相手となるベトナム企業の数には限りがあり、選択の余地がない場合もある。合弁相手の情報については、会計検査機関が監査した財務諸表を閲覧できることになっている。

  6. 駐在員事務所を支店または現地法人に変更する場合には、国家協力投資委員会への申請が必要である。しかし、変更自体については規制していない。駐在員の数が制限を超えた場合は、就労ビザの申請が必要である。
    輸入割当(インポート・クォータ)は減らす方向にある。94年は15品目が対象であったが、95年は石油、肥料、セメント、鋼材、砂糖、12人乗り以下の自動車、バイクだけになった。国内産業を育成したいので、完成品の関税率を引き上げ、原材料・部品の関税率は引き下げたい。また、密輸品の取締りを強化する。

  7. 公務員の腐敗防止に全力を挙げて取り組むとともに、合弁企業の秘密保持に努力したい。

  8. 未払い債務の返済は非常に困難な状況にある。日本の商業銀行に対する債務はロンドン・クラブで交渉したが、結論は出ていない。また、民間企業に対する債務についても返済期限の延長を要請したい。

  9. 政府としても人材の育成を重要視している。合弁企業での研修についても、派遣側、受入側の双方で資質のある者を選抜して成果を上げてほしい。研修には費用もかかるので短期間のコースを中心とし、また研修を受けた者が引き続き同じ企業で働くようにするために、企業と研修者との間で契約を結ぶことが必要である。日本だけでなく、ベトナムの近隣諸国で研修させることも良いことだと思う。


発言するサム国家計画委員長


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