日本カナダ経済人会議結団式(団長 江尻宏一郎氏)/4月17日

日加関係は良好、多国間の場で連携を目指す


5月15〜16日にカナダのビクトリアで開催される第18回日本カナダ経済人会議に向けて、結団式を開催した。席上、花田外務省北米局専門官、守谷通産省通商政策局北米通商調整官、テナント駐日カナダ公使から、カナダの政治・経済状況は概ね良好で、日本との関係も順調であり、ハリファックス・サミット、APEC大阪会議などにおける両国の連携とリーダーシップが望まれるとの発言があった。

1.花田外務省専門官説明要旨

  1. 93年10月の発足以来、自由党のクレティエン政権は50%台後半〜60%の支持率を維持している。
    財政再建のため、95年度連邦予算案は国債費、先住民関連経費、科学技術関係費を除く全項目の歳出を大胆に削減しているほか、閣僚数の削減、3年間で公務員45,000人(14%)の削減、公社の民営化、歳入増収措置などに取り組んでいる。しかしアメリカの財政赤字の影響による国内金利の上昇で国債費が膨張しており、財政再建の不安材料となっている。
    財政再建の他、同政権はケベック州の分離独立問題を課題として抱えている。ただし同州の分離独立支持派は多くはなく、現時点でレファレンダム(州民投票)を行なっても勝算がないと見られることから、分離独立支持派のパリゾー同州首相は、レファレンダムを秋まで延期した。

  2. 外交政策に関しては多国間の枠組みを重視し、特に国連の平和維持活動(PKO)に積極的に貢献している。
    経済分野では、アメリカ、メキシコとの間の北米自由貿易協定(NAFTA)が発効した。APECにおいても経済委員会の議長国を務め、貿易・投資の自由化に積極的に取り組んでいる。
    クレティエン政権はアジア重視の姿勢を示しており、例えば中国については、人権問題を貿易にリンクさせない立場を明確にし、中国を新たな市場と見なして関係促進に努めている。
    総じて言えば、日加関係は順調である。21世紀に向けたさらなる関係強化のために設置された日加フォーラム2000の報告書のフォローアップが、現在、行われている。

2.守谷通産省北米通商調整官説明要旨

  1. カナダの経済状況は92年以降、米国経済の回復に伴い好調である。特に94年は、カナダドルの下落もあり、対米輸出が大幅に伸びた結果、実質国内総生産(GDP)成長率は4.5%となった。しかし景気回復が企業のリストラによりもたらされたため、失業率はさほど低下しなかった。カナダドルの継続的な下落とメキシコのぺソ危機に対応して、7%台で安定していたプライムレートは現在10%近くまで引き上げられており、95年は景気が減速すると予想される。

  2. 日加貿易は、87年以降日本側のわずかな入超で推移してきたが、ほぼバランスしている。またカナダから日本への輸出は原材料中心、日本からカナダへの輸出は工業製品中心で、補完的な貿易関係となっている。日加間の貿易総額は 150億ドル程度であり、日本にとってカナダは第13位、カナダにとって日本は第2位の輸出相手国である。カナダは対日アクション・プランにより輸出を促進しており、通産省でもこれに対応したプログラムを作っている。
    日本の対加投資は89年度には飛躍的に増加したが、ここ数年低調であるため、カナダ側は投資促進を要望している。最近、NAFTAの成立や日米摩擦の激化を受けて、対加投資が見直されつつある。

  3. ハリファックス・サミット、APEC大阪会議という大きな国際会議が両国で開催される画期的な年に当たり、日加両国は多国間の場での連携を強めようとしている。
    貿易・投資の自由化をうたったボゴール宣言を実行するための行動指針をつくることが、APEC大阪会議の重要なテーマであり、日加両国のリードが期待される。
    ハリファックス・サミットでは、国際金融制度の強化が主なテーマとなるであろう。貿易分野では、金融サービスや基本テレコムなどウルグアイ・ラウンドで積み残された問題や、貿易と環境、貿易と労働基準など「新たな貿易問題」も存在する。
    カナダは自由貿易拡大の手法として、NAFTA、欧州連合(EU)、APECの間で制度のハーモナイゼーションや関税の相互引下げ・撤廃を進め、統合していく「WTOプラス」のアプローチを提唱しており、日本によるアジアでの貿易地域協定推進を支持している。

3.テナント公使挨拶要旨

  1. 本年は、ウィスラーでの4極閣僚会合、ハリファックス・サミット、APEC大阪会議等があり、日加両国が大きな役割を果たす年である。これらの会合を通じ、ポスト冷戦期の国際経済機関の役割、国際金融体制、世界貿易機関(WTO)の定着やボゴール宣言の実現をはじめとする貿易の自由化について、アイデアが得られればと思う。

  2. 日加両国は、経済の構造的変化に対応し、変化から生まれる新たな機会を利用すべきである。規制緩和がこれを促進するであろう。日本の規制緩和推進計画を歓迎しているが、さらなる加速が必要である。
    カナダは対日アクション・プランを作り、加工食品、海産物、建築資材・住宅、航空宇宙、自動車、情報通信、観光の7つの新分野でビジネスの拡大を目指している。
    最近、日本の対加投資のが減少している。しかしカナダにおけるトヨタの大規模な工場拡張の決定は、カナダの投資環境のよさを裏付けるものであり、今後の日本の対加投資の拡大につながると見ている。
    日加関係が順調に推移していることは両国の努力の証左であるが、変化が生む新たな可能性に両国はようやく対応しはじめたばかりである。


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