流通委員会企画部会(部会長 青木辰男氏)/4月21日

ディスカウントストア、通信販売業界から取組みをきく


流通委員会企画部会では、流通分野の構造変革に関するヒアリングを行なっている。今回は、ディスカウントストア業界からミスターマックスの力丸常務取締役、通信販売業界から千趣会の野口専務取締役を招き、企業・業界としての取り組みや今後の展望等について説明を聞くとともに、意見交換を行なった。

1-1.ミスター・マックス 力丸常務取締役説明要旨

1.ディスカウントストア業界の現状

アメリカではデパートからGMS(総合スーパーマーケット)、そして現在はDS(ディスカウントストア)と中核的な業態が変化してきている。日本ではDSは未だ業界として固まっていない。現在日本でDSと呼ばれるものは、(1)現金問屋や倒産品等を扱う特殊店、(2)単品種(酒、衣料、薬、パソコン等)専門店、(3)日本型スーパーの系列店、(4)Kマートやウォルマート等アメリカのDSをアレンジし、チェーン展開を目指す店に大別できる。

2.当社の取組み

当店は(4)を目指し、ローコスト・インベストメント、ローコスト・マーチャンダイジング、ローコスト・オペレーションによるローコスト経営を展開している。
具体的には、店舗は、土地代、建設費の削減を図る観点から郊外に平屋建てで建設している。アクセス時間20分以内に商圏人口10万人が存在し、不動産分配率(不動産投資関係費用/粗利益高)15%以内が出店のひとつの目安である。
このような立地条件で15,000坪の敷地を確保し、2,500坪の店舗と750台規模の駐車場を備え、周辺に食品スーパーや専門店のテナントの参加を求めたSC(ショッピングセンター)が、標準として考えている展開である。
商品はマスセールが可能な大衆品、実用品、必需品に絞り、価格帯も低く狭く定めている。特に低価格化が可能なPB、SB(プライベートブランド、ストアブランド)で売場面積の4割、粗利益高の5割を占めることがDSのあるべき姿と考えている。
今後は、九州に加え、中国、北関東を重点に多店舗化を図ることにしている。またSCに飲食店、郵便局、歯科医院、美容院、宅配便等生活必需サービスを取り込むことにより、集客能力の一層の向上を図っていきたい。

3.政策要望

政策的には第一に大店法の撤廃を求めたい。併せて食品衛生法、薬事法等輸入関連の法の見直しが必要である。さらに土地開発関連規制の緩和も要望する。

1-2.質疑応答

問:新規出店における大店法の影響は。
答:昨年5月の緩和で面積1,000m2以下の店舗は「おそれなし届け出」とされたが、当店の目指す2,500坪の店舗を実現するためには、一層の緩和が必要である。

問:新規出店の影響で地域の中小小売店が廃業する惧れはないか。
答:廃業はむしろ後継者問題であると聞いている。例えば電機店は最低300人の固定客があれば成り立つ。

2-1.千趣会 野口専務取締役説明要旨

1.通信販売業の実態

通信販売業の売上高は81年以降2桁成長を記録し、バブルの崩壊によって伸び率は鈍化したものの、依然としてプラス成長を持続している。93年度の売上高は1兆9,000億円と小売業全体の売上高の1.4%を占める。
また、新規参入が減少する中で退出企業が増加しており、上位7位の売上高シェアが40%と寡占化が進行しつつある。他方、内外価格差を背景として外国事業者の進出や個人輸入の拡大が続いている。
通販は、団塊の世代およびその子女層を含む20〜50歳台の女性を主要顧客としている。中でも、未就学児童を抱えた女性をターゲットにしている。今後は、団塊の世代の高齢化とともに、新たな通販ニーズが生まれることが期待できる。
通販が成長してきた理由としては、女性の社会進出、雑誌による商品の情報化、返品制度の導入等による顧客からの信頼性の確立、通信・宅配サービス等のインフラの充実、適材商品の開発等があげられる。
当社は1955年に、オフィスの女性を対象とした毎月の頒布事業からスタートし、75年からはカタログ販売も手掛け、今では事業の7割を占める。頒布事業の100%、カタログ販売の約60%の商品が当社の独自企画によるものであり、メーカーや商社と提携し、低価格商品を提供していることが特徴である。

2.通信販売業における今後の重点課題

通信販売は、店舗費こそかからないものの、大量のカタログや商品の発送を可能とする物流投資や、顧客データを管理しマーケティングに結び付ける情報系コンピューターの導入等が必要である。
また、品揃えを整備するとともに、クイックデリバリーや日時指定の商品配達等、顧客サービスのグレードアップに努める必要がある。
さらに、ローコスト・オペレーションの徹底、海外からの製品輸入など、低価格化に向けたさらなる努力が必要である。

3.政策要望

郵便料金や電話料金を引き下げるべきである。また、医薬品やコメ、酒等も通信販売で自由に扱えるよう、規制緩和を推進すべきである。

2-2.質疑応答

問:マルチメディアによる通信販売に対する可能性はどうか。
答:実用化にあたっては莫大な開発投資が必要であり、現段階で果してビジネスとして成立するのか疑問である。

問:PL法への対応策はどうか。
答:品質に対する吟味や判断が要求されてくる。信頼性あるメーカーや商社と取引することが重要になる。


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