海洋開発推進委員会(委員長 大庭 浩氏)/4月21日

今後の海洋開発政策―地震予知・地球環境問題などへの対応


海洋開発推進委員会では、科学技術庁の林幸秀・海洋開発課長を招き、今後の海洋開発政策の展開について説明を聞き、意見交換した。林課長からは、『海』の視点からも地震予知や地球環境問題に対応し始めている旨説明があった。以下は、林課長の発言要旨である。

  1. 海洋開発の目的
  2. 海洋は地球表面の約71%を占め、広大な未知の領域を残し、膨大な生物・鉱物資源等を包蔵している。また、地球環境変動にも大きな役割を果たしている。海洋開発の目的は、
    1. 海洋に関する科学的知見の拡大、
    2. 地球環境問題への対応と国際協力、
    3. 海洋エネルギー・空間等の利用促進である。
    科学技術庁は、海洋開発に係わる関係省庁との調整とともに、海洋科学技術センター(会長:大庭委員長、以下、センター)を通じて、先導的・基盤的・総合的プロジェクトを自ら実施している。

  3. 海洋科学技術センターの活動
  4. 95年度のセンターへの政府予算は、対前年度比18.5%増の約165億円である。主な活動としては、
    1. 深海調査研究では有人潜水調査船『しんかい6500』などを駆使した深海微生物の研究等、
    2. 海域利用研究では、波力エネルギーの利用等、
    3. 海洋観測研究では、地球環境問題に関連した海洋諸現象の解明等である。
    3月に無人探査機『かいこう』がマリアナ海溝で潜航世界記録を達成したのもセンターの活動である。水深10,911mの海底で生物を発見した(『かいこう』の活動模様ビデオ上映)。

  5. 地震予知・地球環境問題への対応
  6. 地震発生メカニズムの解明には、海底堆積物等の収集・分析を行うことが有効と期待されている。現在は、アメリカの深海掘削船が国際協力で運用され、調査活動を行っているが、このアメリカ船は21世紀初頭に退役することとなっている。わが国としては、このアメリカ船に続く深海掘削船を提供するために、技術開発を行なっている。
    地球環境問題の解明のためには、国際的な協力の下で、海洋観測調査を進める必要がある。わが国では、音波を利用した海洋観測技術開発とともに、『原子力船むつ』の大型海洋観測研究船への改造などに着手している。大型ブイなどの最先端観測システムを搭載し、97年度から西太平洋などで活動を行う予定である。

  7. 国連海洋法条約発効の影響
  8. 200海里を排他的経済水域とすること等を定めた国連海洋法条約は、昨年11月に発効した。現在、政府は96年初頭の批准に向けて、国内法との調整作業中である。
    同条約によれば、排他的経済水域内での海洋調査研究の実施には、沿岸国の同意が必要とされており、わが国の調査研究が制限されることのないよう努めて行きたい。


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