経団連意見/5月16日

大規模拠点空港に重点を置いた空港整備計画の策定を求める


経団連は、5月16日の第 564回理事会で「今後の空港整備のあり方−大規模拠点空港に重点を置いた空港整備計画の策定を求める−」をとりまとめ、政府等関係方面に建議した。以下はその背景と概要である。

  1. 21世紀に向けた空港整備は正念場
  2. わが国では、現に国内線・国際線ともに大きな航空需要が存在するにもかかわらず、それを満たす大規模拠点空港の整備が進まない状況が続いている。
    政府では現在、「第7次空港整備五箇年計画」(1996〜2000年度)の策定に向け、航空審議会(委員長 八十島義之助帝京技術科学大学長)の場で審議を進めているが、今後わが国が本格的な高齢化・少子化への道を辿り、国民負担率の上昇と財政の逼迫が同時に進行していくなかで、十分なキャパシティを持つ大規模拠点空港の整備を実現できるかどうかは、この計画期間中の取組みいかんにかかわってくる。

  3. 大規模拠点空港整備は国の責務
  4. 21世紀に向けて国民のモビリティ向上に役立つ社会資本ストックの整備が急がれていること、アジア・太平洋諸国への積極的な貢献をはじめ、国際社会のなかで果たす役割がますます大きくなっていることを考えれば、効率的な航空ネットワークの要となる大規模拠点空港は、国の役割として優先的に整備すべき基幹的インフラであると言えよう。
    したがって今後は、大規模拠点空港を国際的な競争・共生、さらに地域開発、産業振興の拠点として位置づけ、五箇年計画期間中に重点的に整備を進めていくべきである。

  5. 国の一般財源の投入拡大と開発利益の吸収・還元
  6. 現に大きな需要がありながら、大規模拠点空港の整備が進まない原因の一つは、財源の9割を航空機燃料税や空港使用料などの利用者負担に依存した空港整備特別会計の仕組みにある。
    したがって、まず公共事業費のシェアを大胆に見直し、空港整備に国の純粋一般財源を重点的に投入すべきである。
    また、地方自治体の税収等を通じて開発利益の吸収・還元を実現することも重要であり、周辺開発事業やターミナル事業との一体化、証券化手法や免税債の導入など具体策の確立が求められる。
    さらに空港建設・運営コストの削減を図る観点から、浮体工法などの新技術の導入や、管制見直し等による発着回数の拡大も必要である。

  7. 内外から求められる大規模拠点空港の姿
  8. 今後整備される大規模拠点空港は、十分な空港容量を備えるとともに、旅客の国内線・国際線の接続や貨物取扱の利便性、空港使用料の設定等の面で内外のニーズを満たすものでなければならない。大地震等の自然災害にも対応できるよう、複数の大規模拠点空港が相互に補完し合う多重的な航空ネットワークを構築しておく必要がある。
    とりわけ国際的に高水準にある国際線、国内線の空港使用料等については、利用者負担の軽減を図る方向で見直す必要がある。

  9. 大規模拠点空港の整備がもたらす経済的効果
  10. 経団連の試算では、三大都市圏の空港容量を拡大していけば、2010年時点で、三大都市圏を出発地とする航空需要は国内線で概ね現在の 1.6倍、国際線で 2.7倍に拡大する。これらの需要を満たすために必要なプロジェクトとして、
    1. 首都圏において新東京国際空港(成田)の2期工事の完成、首都圏第三空港の具体化、東京国際空港(羽田)の管制見直し等による発着回数の拡大、
    2. 関西圏において関西国際空港の2期工事の完成、
    3. 中部圏において中部新国際空港の完成、
    をあげている。
    2010年時点でこれらのプロジェクトが実現した場合、潜在的に航空利用を指向していた旅行者が、実際に航空を利用することが可能となり、その運賃や宿泊費等の拡大を通じて年間3兆 9,500億円にのぼる生産誘発効果が期待される。

  11. 空港容量の拡大を通じた規制緩和の促進
  12. 空港容量が拡大し、航空事業者間の競争が促進されていけば、現在進められている航空運賃・料金、運航サービス等に関わる規制緩和の効果が顕在化するのみならず、さらに思い切った規制緩和を進めることが可能となる。

  13. 地域における拠点空港の整備
  14. 地域住民の利便性向上にも資する、多重的な航空ネットワーク構築の観点から、三大都市圏に加え、新千歳空港の整備や東北地域における新国際空港構想の検討推進、現在構想中の九州国際空港の具体化、さらに中国、北陸等地域における拠点空港の整備も進めていく必要がある。

  15. 地方空港の整備
  16. いわゆる地方空港については、地元自治体が他の交通インフラとのバランスや地域の発展戦略等を勘案しながら、自らプライオリティを判断して自律的に進めるようにすべきである。そのうえで、地域振興の一環として地方空港を新たに建設する場合には、開発利益の吸収・還元を自ら行える地元自治体の負担で行うべきである。

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