消費者・生活者委員会(委員長 福原 義春氏)/5月12日

シニアマーケットの拡大について意見交換、
消費者・生活者とのよりよい関係調査報告


消費者・生活者委員会では、高齢化社会における中高年者の自立自助支援を目的に、相談事業や商品研究などの活動をすすめる(財)シニアルネサンス財団の喜多村治雄会長より「経済社会の変化とシニアマーケット」について説明を聞いた。また、同委員会が昨年秋に実施した「消費者・生活者と企業の『よりよい関係』づくりの取り組み」の事例収集に関するアンケート調査結果ならびにそこから導かれるメッセージを報告した。

1.経済社会の変化とシニアマーケット
  喜多村会長説明要旨

  1. 人口構造の変化とその影響
    1. 人口が増え続けることが前提の日本社会に変化が起きつつあり、2011年をピークに人口は減少していくと予想されている。
    2. かつて、老後は人生の付属物として捉えていた。それが現在は、50才以降の余命が30年となり、人生の枠組みが変わりつつある。人口ピラミッドも従来の二等辺三角形から、長方形、さらには植木鉢型に変わりつつある。
    3. シニア層(55才以上と定義する)の人口は現在、既に24%を占めている。この傾向は第1ベビーブーム層、さらにその子供達の層がシニア入りする中でさらに強くなりシニアが消費の主流になると予想される。また、2010年には選挙権を有する国民の半数以上が既にシニア層であり、政治への影響力も大きい。

  2. 高齢者に対する評価、高齢者自身の意識の変化
    1. 高齢者を社会がどう捉えているかのキーワードは、昭和20年代は「尊敬」、30年代は「敬遠」、50〜60年代は「恍惚、同情と悲哀」と変化してきた。平成に入ると人口の高齢化の進展に伴い、高齢者も普通の人と捉えられ、特別なキーワードはなくなったようである。
    2. 高齢者自身の意識も「自分たちで生きていく」「肉体は衰えても精神は新たなる高みに到達可能だ」と大きく変わりつつある。高齢者は「病気がちの被扶養者で介護施設が必要」とのイメージがいまだにあるが、実際には、8割の高齢者が健康に暮らしており、そのうちかなりの部分が経済的に独立しており、介護施設に入りたがってはいないのである。

  3. 拡大するシニアマーケットと着眼
    1. 厚生省の推計では、2010年の人口は1990年と比較して全体で679万人増加するが、年齢層別に見て増加するのは55才以上のみであり、それ以下はすべて減少、特に15〜29才の層で大きく減少する。それだけにマーケティングの対象として高齢者が注目される。
    2. 現在の高齢者向け商品は医薬品や介護商品が中心であるが、今後は老人福祉の面だけではなく8割の健康な高齢者にも喜ばれる商品を開発していくことが重要である。
    3. シニア向け商品開発に際しては、高齢者の特性の理解が必要である。米国では、高齢者を「資金と時間が豊富な熟練消費者」と捉え多様なセグメンテーションを行っている。また高齢者には実際より10才は若く見られたいとの欲求があり、購買時のインセンティブも若者とは違う。加齢に伴う身体的な変化からのニーズ(重い、見づらい、聴きづらい等の忌避)もある。
      アメリカでは自動車のエアバッグは高齢者の安全性確保のために開発したとされるが、今後はこのような「ジェロントロジー(長寿社会の人間学)」の視点がいっそう必要となるだろう。

2.消費者・生活者と企業の「よりよい関係」事例調査報告

  1. 調査の経緯と取りまとめ結果
  2. 当委員会では一昨年、「企業と消費者」および「企業と地域社会」、「企業と社員」それぞれについて、よりよい関係作りにむけた提言をまとめた。
    企画部会(部会長:立石信雄氏)では、昨年秋、この3つの提言を踏まえてより実際的な検証を行うべく、経団連会員企業を対象に具体的な事例収集調査を行った。これは各企業で行われている「消費者・生活者と企業の『よりよい関係』作りの取り組み」の成功事例を各社が情報として共有し、さらなる取り組みの契機、参考に資することを目的としたものである。結果として、全社的な取り組みから個々のセクションや事業所独自のものまで、 875件の事例が寄せられた。これらを、
    1. 事例一覧(875件の全事例について事例の概要、企業名、事業所、実施時期を記載し、一覧として網羅)
    2. 「個別事例」の紹介(具体的かつ詳細に紹介することが各企業の参考になると考えられる79件の事例について、表面にあらわれない努力や工夫まで含め内容を紹介)
    3. 事例が語る取り組みのポイント(今回寄せられたさまざまな事例に見いだせる「業種や商品の違いを越えた共通のポイント」を抽出しまとめたもの)
    の3種類の資料として取りまとめた。各企業で、社会とのかかわり方や新たな取り組みを考えていく上でのヒントとして活用されることを期待する。

  3. 消費者・生活者、社会との「よりよい関係」に向けたメッセージ
  4. 各種多様な事例から導かれる有用な視点を、今後の企業のあり方を考える上でのメッセージとして下記の通りまとめた。
    1. 業種、商品、技術、施設など自らの特性を活かした「社会へのかかわり」の理念を確立し、創造的な関係づくりを。
    2. 直接社会と接する「現場」に集まる社会からの「生の声」を新たな関係のきっかけに。
    3. 多様な「社員」の個性と自己実現意欲を活かす企業風土が創造性の源泉に。
    4. 一方的な情報発信ではなく、要望・苦情に耳を傾け、問いかけには必ず答える双方向のコミュニケーションが新たな価値を創造する。
    5. 地域の諸団体、行政、他企業等との組織を超えた協力と連携が大きな効果を導く。


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