第106回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/5月8日

円高の急激な進展等により、景気腰折れの懸念が強まる


景気動向専門部会では、最近の経済動向について、関係省庁ならびに日本銀行から説明を聞くとともに、急激な円高の影響と企業の対応を中心に意見交換を行なった。輸出企業を中心に、企業は急激な円高の厳しい影響を受けているが、大幅な円安は望めず、景気腰折れの懸念が強まっている。以下は、懇談の概要である。

1.企業の円高への対応は限界

  1. 急激な円高の進展により、ようやく回復の兆しが見え始めていた景気の腰が折れる懸念が強まっている。

  2. 輸出企業の中には、1円の円高により、企業収益が年間60億円減少する企業もあり、輸出価格の引き上げ、決済通貨の円建て化など、懸命な円高対応努力を行っているが、円高の影響は避け難く、販売数量の減少を覚悟せざるをえない状況である。

  3. 1ドル=90円台以上の円高水準では、国際競争力が比較的強い製品でももはや対応が困難であり、このままでは、海外に生産をシフトせざるをえなくなる。輸出企業は、この他に、
    1. 経営基盤の強化、
    2. 国内販売の重視、
    3. 海外調達の拡大、
    4. 新事業の育成、
    等の対策も講じているが、これらの努力にも限界がある。

2.今後大きく円安に戻ることは期待薄

  1. 当面の為替相場についてみると、1ドル=85円程度の為替水準で、輸出企業のドル売り予約が大量に控えており、ドル安・円高圧力となっている。また、多くの輸出企業が、ドルベースの輸出価格引き上げを予定していることから、今後、ドルの受け取りが増加し、ドル売り圧力が強まる可能性もある。従来、経験的に、輸出企業の社内レートが円相場の最高値となっているため、社内レートがどのような水準に決められるかも注目される。

  2. 構造的な円高・ドル安要因としては、
    1. アメリカ経済の相対的な地位低下、東南アジア諸国の公的準備に占めるドル資産のウェイト低下等により、ドルの基軸通貨としての信認が低下していること、
    2. 日本の株式市場低迷等により日本の投資家の為替リスク負担能力が低下し、日本の機関投資家が積極的な外国証券投資に踏み切れないため、為替相場が日米金利差拡大の影響を受けにくくなっていること、
    等がある。

  3. アメリカ国内にドル安によるインフレ懸念が高まっておらず、アメリカがドル防衛策を講じる公算が小さいため、今後、為替相場が大きく円安・ドル高に戻ることは期待しにくい。


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