来賓挨拶

日本経済の将来に向けた官民の取組みを

大蔵大臣 武村 正義


  1. 本格的な景気回復に全力で取り組む
  2. 日本経済は、生産活動全体の指標から判断すればゆるやかな回復基調にあると認識している。しかし、3月以来の為替変動が景気の先行きに深刻な影響を与えることが予想され、本格的な景気回復の一点に向けて政府は全力で取り組んでいく所存である。
    4月14日には緊急円高経済対策をまとめ、各省あげてその実現への取組みを進めている。4月末のG7の会合では、日本政府として「現状の為替水準は正当性を欠くものである」と主張し、声明に「秩序ある反転が望ましい」との文言を盛り込むことができた。その結果、欧米、ニューヨークの為替市場は円安の傾向に進んだ。しかし5月26日朝、確たる経済的な背景がない下でまた円が高騰しており、まだまだ不安定な状況にあると認識している。
    世界を見渡せば、現在、景気にもたつきを見せているのは日本だけである。内需の拡大が課題であり、政府自ら率先垂範で取り組んでいる。先般、赤字国債、建設国債を前提に、2兆7千億円の補正予算を組んだ。もちろんこれで十分とは認識していない。70兆円の国家財政を意欲的に執行していくことが基本であり、震災・円高対策に加えて、景気動向により今年度の後半も弾力的かつ機動的に財政運営を図り、景気回復に全力投球していく所存である。

  3. 財政は厳しくとも施策には万全を期す
  4. 一方で、わが国の国家財政は年々不健全かつ脆弱になっていく状況にあり、国債総額は216兆円に達している。「国債は国民の財産である」との説を唱える学者もいるが、借金が嵩めば元金と金利の負担は増えるのが当然である。本年度の元利償還額は13兆円を超えるが、国の税収約40兆円のうちそれだけの額が借金の返済にあてられ、政策にまわすことができない。しかし、現時点の対応が今後の日本経済の運命を決定するのであり、厳しい財政状況の下でも、建設国債、特例公債も発行して、必要な対策には万全を期していくつもりである。
    金融機関の不良債権の問題も、日本経済の行く手に暗い影を落としている。早急に全体像をつかみ、5年間を目処として処理していくための対策づくりに現在取り組んでいる。避けては通れない問題であり、大胆な取組みが必要だと認識している。

  5. システム変革を成し遂げよ
  6. 戦後50年を迎えた今、経済構造はもちろんのこと、日本社会のあらゆるシステムが壁にぶつかっている。これを乗り越えてこそ、新しい日本経済の姿が見えてくる。官民あげて問題解決への取組みを進めていきたい。


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